先日、部下が秋祭り実行委員長の仕事をしていまして、一緒に残って仕事をしていました。
色々教えたり確認したりしながらやっていたのですが、作業に目処がついた所であとは部下に任せ、私は先に上がりました。
それから数日経ってから残業届を出させてなかった事を思い出しまして、「迂闊(うかつ)だったなぁ」と反省しました。すぐに残業届を私が書き彼女に捺印をもらって提出しました。
残業代の請求って、残る部下も仕事を任せる上司も、互いに気遣いが大切ですよね。
今回は残業代の請求にまつわる小話です。
[目次]
1 . 若かりし頃の思い出
私が20代前半だった頃、納涼祭の実行委員長を初めて勤めた時のことです。
企画書の作成や関係部署への調整などで、私は連日残って仕事をしていました。
初めての仕事内容で今思えば要領も悪かったのですが、とにかく失敗してはいけないと終始全力投球でやっていたんです。
納涼祭前日には夜遅くまで準備。当日も朝早くから準備、夕方から納涼祭、夜遅くまで片付けなどの作業があります。とにかく、毎日何かしら残っていました。
それから1ヶ月が経ち、納涼祭翌月の給与明細を開くと・・・
残業代2時間分しかついていない!
いや、分かってはいたんです。
うちの会社は申告制ですから、申告していないものは一切カウントされません。分かってはいたけれど、実際に給与明細を見ると結構ショックなものですね。
当時は残る方も残らせる方も、残業代を申請するという文化自体がありませんでした。
頑張った分だけ内面的には学ぶものも大きかったですが、それでも慰めきれない何とも言えない脱力感が、私の原体験になっています。
2 . 上司として
当時の私の気持ちを後輩には味合わせたくないというのが、私の想いです。
関係過去記事リンク▼www.sow-the-seeds.com
では、私が上司として気をつけたいと思っている部下の残業代の請求について、いくつか私の考えを綴ります。
① 私の目の届く範囲は、残業代を出してもらう
先にも述べたように、うちの会社は残業は申告制ですから、極端に言えば残業届を出すのも出さないのも自己責任です。
皆いい大人ですから、そこまで上司が面倒見る義理はないと思うこともあります。
しかし人間そんな強くないです。皆が皆、自分の仕事に対し対価を求めて要求なんて出来ないです。
当人が自ら請求する努力も必要ですが、上司が部下に残業届を出してもらう努力もまた必要だと思っています。
私も24時間365日職場にいるわけではありませんから、目の届かない部分もあります。しかし私の目に見えた所、気づいた所については、こちらから声をかけ残業届を出すようにしています。
自分のいなかった日でも、例えばその日に夕方救急対応があったりすると時間で帰れないことが予測できます。その日の日勤者に状況を確認し、必要に応じて残業届けを出してもらうこともあります。
②『仕事』には対価を支払う
遊びで残ってるのだったら残業代を払う必要はありませんが、『仕事』をしていたのであれば、その仕事に対して対価を払うのは当然のことです。
部下が責任を持って仕事をしてくれた事に対して礼を尽くしたいですし、その方法は言葉や気安めではなく対価であるべきだと思っています。
③ 仕事に責任を持ってもらう
もう一つ、人材育成の観点から大切な事があります。
対価を払うという事は、その分だけ責任が発生します。
残業をする方も何となくでダラダラ仕事をするのではなく、やるからには正式な仕事としてプライドを持って取り組んでもらいたいのです。
時間も気にせずのんびり自分のペースで仕事をした方が気楽なこともありますが、そこは『仕事』ですから、気持ちを引き締めて取り組んでもらいます。
④ 時間のマネジメントを意識してもらう
人材育成の観点で言うと、もう一つ。
それは自分の仕事のマネジメントを出来るようになってもらいたいと言うことです。
どのくらいの作業時間が必要なのか、今日やらなくてはいけないのか、カレンダーを見てスケジューリングしたのか…本当にやる必要がある仕事なのか、本当にやらなくていい仕事なのか…
自らの仕事(時間や価値)を主体的にコントロール出来るようになってもらいたいのです。
対価の発生しない(=責任の発生しない)仕事や時間にルーズ仕事では、この部分の成長は絶対に得られません。
⑤ 出来るだけ実態に即した組織マネジメントを行う
経営上、収支が成り立つ範囲で仕事をしてもらう事は当たり前です。出来るだけ少ない労働力で、出来るだけ大きな利益を得られるのが理想です。
そしてそれは、サービス残業などの所謂ブラックな労働によって達成しても何の意味もありません。
支出(この場合主に人件費)が多くなりすぎないような形で商売を考え、仕組みを作るのはマネジャーの責務です。構造的にサービス残業なしでは成り立たない状態になっているのでれば大きな改革も必要です。
実態をマネジメント層や経営層が正しく把握するためにも、残業届は出してもらった方がありがたいのです。
⑥ やりがい搾取が嫌い
やりがい搾取という言葉を最近よく聞くようになりました。
参考外部リンク▼kaigolab.com
会社は従業員を守ってくれるなんて事は全然なくて、頑張りたい職員の良心に漬け込んでトコトン働かせてやろうという会社は実際にあります。
悪意があればまだ潔いのですが、やっている側に自覚がないことも結構多いのではないでしょうか。
特に介護のように「人の役に立っている」「目の前に弱った人がいる」「やった分だけ喜んでくれる」のが分かりやすい仕事だと、正義感が暴走して自分にも人にも「お金じゃない価値がある!」「利用者のためなら何だって出来る!」を強制するようになるリスクが高いです。
私は、教育は一種の洗脳だと思っていて、このようなやりがい搾取色の強い方向には皆を扇動したくないです。
昔テレビである大手企業の研修を特集していましたが、新人研修で大声出させたり、わざと泣くくらい追い詰めたりして、最後は感動の一体感!みたいな・・・、ああいうの本当に嫌いです。
さいごに
さて、上司としては引き続き気をつけていきたいわけですが、部下という立場で働く人にも伝えたいことがあります。
自分の権利、自分の仕事、自分の時間にプライドを持って、たまには主張しましょ!
サービス残業をそのままにしておくと、上は「時間内で出来ている」とみなします。それじゃあいつまで経っても事態は好転しませんし、悲しいじゃないですか。
人手不足のこの業界、ダメな職場は自然と淘汰されていく時代だとは思いますが。何はともあれ、介護業界で働く人の環境が少しでも良くなればいいなぁ…と思った今日この頃でした。