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良い上司と巡り会える可能性は1%、自分が良い上司になれる可能性も1%【成人発達理論】

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仕事中によく出くわすある場面。職員たちが口にする上司の愚痴。

「申し送りがない。聞いていない。」
「相談がない。勝手に決められた。」
「ワンマンだ。」等々

しかしそんな職員たちも、例えば委員会の長として、あるいは行事やプロジェクトの担当として自らがリーダーシップを発揮する場面になると、文句を言っていた上司と全く同じ間違いを起こしていたりします。そして、そのことに当人は気づいてさえいない。

つまり、時間が経ちその職員達が出世した頃には、今まで文句を言っていた上司と同じ程度の人間になる可能性が高いと言うことです。

「そうやって時代は繰り返されていくのだろうな…」と、なんとも言えない気持ちになります。



もう一つ、考えさせられる事があります。

今まで多くのリーダーを部下に持ち接してきました。私自身が昇格を推薦した人もいれば、組織の都合上、成り行きで上司部下の関係になった人もいます。

このリーダー達を、どのように育てていくべきなのかを考えることはもちろんですが、それと共に「どのような人がリーダーになるべきなのか」と言うことについても常々考えさせられます。


成人発達理論の考えに触れた時、少しヒントが見えた気がしてスッキリしたので、今回はそのご紹介です。


[目次]


 

1 . 成人発達理論について

成人発達理論とは、「人間が生涯をかけてどのように成長していくのか」と言うことを扱う学問だそうで、ロバート・キーガン博士は成長段階を5段階に分けて説明しています。

なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践

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組織も人も変わることができる!  なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学

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この5段階をまとめるとこのようになっています▼

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第1段階から始まり、成熟するほどに第5段階へと移行していきます。第1段階は子どもの事なので、ここでは無視して第2段階から話を進めていきます。


道具主義的、利己的段階

自己中心的、自分に甘く他人に厳しいと言う段階です。

道具主義的というのは、他者の感情や思考に無頓着で、道具のように自己中心的に扱うという意味です。

社会に出たての20代前半の人に多いなーと感じます。今まで見てきた若者はこれだったのか!と、私は腑に落ちてしまいました。そして私自身、過去を振り返ると思い当たる節がありすぎて痛い…

成人の約10%はこの段階なのだそうです。


他者依存、慣習的段階

自らの意思決定基準を持たず、人の基準や社会の基準に合わせがちな人。よく言えばルールに忠実、従順な人たちです。

サラリーマン的と揶揄されるのがこの段階の人たちでしょうか。

成人の約70%の人がこの段階に当たります。


自己主導段階

自らの価値観や基準を持ち、それによって自律的に意思決定できるのがこの段階です。また、自身の成長に強い関心があり、自分の考えをしっかり主張できるという特徴があります。

この段階になると、リーダーとしても自律的な意思決定が出来るようになり、頼りがいがありそうです。その反面、部下から見るとワンマンだとか、上司から見ると扱いづらいとか、それなりに摩擦もあるかもしれません。

成人の約20%がこの段階だそうです。 


自己変容・相互発達段階

多様な価値観や意見を汲み取りながら、自分の考えだけに捉われず意思決定できるのがこの段階です。

「自己変容」という名前からも分かるように、必要に応じて自分を変化させる事ができる柔軟さと寛容性を持っています。

また、自分の成長だけじゃなく、他者の成長についても強い関心があります。

まさに理想の上司像と言えますが、残念ながらこの段階に至る人は成人の1%にも満たないようです。



2 . 気持ちよく割り切ればいい

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この事から分かるように、理想の上司との出会えるのは、確率1%以下の奇跡であると言えます。そして、自分がそのような上司になれる可能性も1%です。

こう書くとなんか絶望的なような気がしますが、決してそんな事はないと思います。

出会う人の70%が慣習的段階なのだと分かっていれば、ちょっと他者に対して優しくなれる気がします。「自分の意見を言わない」とか「リーダーシップを示さない」とか、あれこれ不満を言うのは違うなと。いい意味で割り切れば良いのではないでしょうか。

さらに言えば、自分なりの考えや理想を持っている人は、やり方次第では自分の思い通りに組織を変革できるチャンスがあるとも言えます。

皆さんはどの段階に当てはまりそうですか?私は…自己評価は無粋ですね、精進します。



3 . 誰を出世させるべきか

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この段階分けは「誰を出世させるべきか」という点でも非常に参考になります。


リーダーの役割は意思決定です。どこかで聞いたのですが「リーダーとは矢面に立つこと」という言葉があります。非常に的を射た大好きな言葉です。

自律的に意思決定できること、自らが矢面に立つ強さがあること、これを考えるとリーダーを任すべきは第4段階以上の人(あるいは第4段階以上になりうる人)という事になります。

ただし第2段階の人と第4段階の人は、自己主張の強さという意味では似ているところもあり、見極めが重要です。

また多くの組織では、第3段階(慣習的)の人がなんとなくで出世し、その人たちが「扱い易いから」とまた第3段階の人を出世させる…こんな悪循環に陥っている事もあるのではないでしょうか。



4 . さいごに

「相手がどの段階にある人なのか」これを見極めようとすると、少しその人に対する理解も深まります。戦略的な人材育成や人員配置にも、大いに参考になりそうです。

役職者同士で話しているとよく感じるのですが、人によって、同じ対象者でも全く評価が異なる事が多々あります。評価される側としてはとても残念かもしれませんが、これが現実です。

少しでも正しく評価し、少しでも良い状態へと成長させる事。そのためにどのように行動し、どのような仕組みを作れるのか。これが組織はもとより私自身の永遠の課題でもあります。