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介護の現場から リーダーのためのブログ

有給取得率と残業時間、私が所属する特養の状況についてご報告 【後編】

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先日、8月の職員の希望有給について確認したところ、今までにないレベルで希望者が多かったので、「これで来月現場回るんかい⁉︎」と面食らってしまった私。

そんな所から始まった、当事業所の労働環境の確認。有給取得については、全国平均を上回る11.3日/年、職員一人当たり消化できそうですよー、というのが前回までのお話でした。

前回記事▼
有給取得率と残業時間、私が所属する特養の状況についてご報告 【前編】 - Sow The Seeds

では今回は、残業時間について見ていきましょう。

[目次]

 


1 . 残業時間

今私の所属している部署では、残業がとても少ないです。

これは私の功績でもなんでもなく、これまでの諸先輩が築いてくれた仕組みと文化によって、そのような状況があります。サービス残業も少ないです。

みんな毎日時間で帰る。時々、個人の抱えている業務や、利用者の急変などで1時間くらい残業する人がいる。多い人でも5時間/月、そんな程度です。

正確な数字は出していませんが、ざっと計算しても一人当たり月平均1時間を下回ります。


厚労省やその他研究機関の発表によると、一人当たりの月平均は11時間〜35時間となっています。振れ幅あり過ぎですが、いずれにせよ当事業所は残業の少ない、ライフワークバランスのためには良い職場と言えそうです。「介護施設はブラックとは限らない」好例でしょう。
毎月勤労統計調査 平成27年分結果速報|厚生労働省
https://www.vorkers.com/hatarakigai/vol_32



2 . 残業にまつわる色々

残業に関して考えたときに、世の中うまくいかないなーと思う事があります。

① 残業代欲しさの残業

残業代って、いざ給料に反映されると結構大きく感じるものです。

「残業代欲しさのために、仕事の効率化が進まず残業が減らない」という企業の話しも、よく聞きます。

会社によりけりですが、残業を減らせない原因がトップではなく現場にある場合もあるようです。


② 良い仕事したくて残業

私が以前いた部署のことです。

介護の仕事って、ある程度組織的に仕事を減らすことも増やすことも可能です。法令に触れない範囲で、行事・委員会を減らすとか。

以前いたところは、仕事に対して熱心な職員が多く、専門性を向上させるべく様々な取り組みや勉強会、委員会などを一生懸命やっていました。

しかしそれゆえに、残って仕事をする場面も多く、それだけ超勤も発生し、経営を圧迫していました。


③「我関せず」の文化

今いる部署は残業が少ないですが、それによるデメリットも多少感じています。


・職員が残業アレルギー

仕事の特性上、利用者の体調変化など、どうしても予定通りには事が運ばない事があります。そうした場合に、職員に残業を命じることがあるのですが、その時の嫌そう辛そうな顔。臨機応変には弱いです。


・時間を過ぎたら、自分は関係ない

この仕事にありがちなのですが、目の前で辛そうにしている利用者や、一生懸命働いている職員を見ると帰り辛くなります。どこかで一線を引かなくていけないのですが、当部署では、この一線の引き方が皆とても早いです。ちょっとドライ過ぎない?と感じることがあるくらいです。

④ 利益がないことには威張れない

今いる部署は、法人内でもトップクラスの利益体質を誇ります。しかしそれは、(良いことも含めて)余計なことはしない文化ゆえに成り立っています。

以前いた所は、利益は上がらないながらも、その熱心さで専門性の高さ、職員の成長スピードは段違いでした。しかし、中でどんなに良いことをやっていても、利益がないことには胸は張れません。慈善事業ではありませんから。

この辺のバランス、ジレンマについてはよく考えさせられます。



3 . 総評

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今回調べてみた事で、自分たちで思っていた以上に、ウチの特養は労働環境に恵まれていることが分かりました。おそらく現場の介護士さんたち、この好状況に気づいていないと思いますが…

とは言え、これは私が今所属している部署に限った話です。同じ法人内にも、残業が多く職員が疲弊しているような所もありまして、法人全体で見たときには決して順風満帆とは言えない状況です。



4 . おまけ

とても順風満帆に見える当特養ですが、別の計算をしたところ、もし職員が一人退職したらこの状況は一変します。職員の充足度は一気に悪化し、現場を回すために有給は今の半分も取れなくなるような事になります。

なぜこのような計算をしたかと言うと、私がマネジメントする上で大事だと思っているのが「計算して、数字で見通しを明確にしておくこと」だからです。

現場の様々なことは数字に変換できます。

これをしないと、無計画な求人計画や人事異動によって、ひどく不安定な労働環境になってしまいます。不安定な労働環境とは即ち、不安定なサービス提供になってしまうと言う事です。



世の主任介護士さん、あるいは部署長さん、施設長さんに聞きたいのですが、「現場が何人いればいいか」ちゃんと把握出来ていますか?

法的根拠、実際の介護現場、収支、これらを総合的に踏まえた上で、現場と経営層が互いにすり合わせ出来ていますか?

  • 現場は具体的な想定なく「人を増やしてくれ!」
  • 経営層も収支が悪くなければ「まぁこんなもんだろう」


と、結構どんぶり勘定になっていませんか?

この辺の計算の仕方についても、また別の機会に綴れたらと思っていますので、どうぞ宜しくお願いします。

※2017.8.16更新しました▼