これまで、書籍「スウェーデンの老人ホーム/岡田耕一著」の紹介や、三回に渡って「日本のユニットケアはどうなっていくべきなのか?」という持論を掲載させて頂きました。
過去記事リンク▼
スウェーデンの老人ホームとの比較から、日本型ユニットケアの問題点を考える【書籍紹介】
日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(1 / 3)
日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(2 / 3)
日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(3 / 3)
これらの記事がきっかけで現役介護職の方々から沢山の反響の声を頂きました。本当にありがとうございます。
実はこの度、そうした反響を頂く中でスウェーデン在住の日本人介護士の方とコンタクトを取ることが叶いまして、私、大変興奮しております。
日本の特養での経験を持ち、現在はスウェーデンの老人ホームで働いているAさん。
今回、Aさんにスウェーデンの老人ホームの実態を色々と伺いましたので、そのインタビュー内容をご紹介させて頂きます。
※Aさんの個人情報、詳しい経歴等は伏せさせて頂きます。また、この記事についてAさんの情報についてお問い合わせを頂いてもお答えしかねますのでご了承下さい。
※今インタビューで得られたスウェーデンの情報は、Aさんの経験・知識・リサーチ等に基づくものですが、スウェーデンの一般論ではなく、ひとつの事例として受け取って頂ければ幸いです。
[目次]
- 1 . 人員配置について
- 2 . 勤務形態について
- 3 . 食事について
- 4 . リネン交換、清掃、入浴などについて
- 5 . 利用者の亡くなり方について
- 6 . サービス全般について
- 7 . ユニットケアにおける食事量や水分量の管理について
- 8 . 待遇について
- 9 . さいごに
1 . 人員配置について
ーー常勤換算法で日本は概ね「2:1」、スウェーデンは概ね「1.2:1」と言われています。この配置はスウェーデンでは一般的なものなのでしょうか。また、日本のように国が定める配置基準があるのでしょうか。
スウェーデンには国が定めた高齢者福祉施設の人員配置がありません。
2016 年に社会福祉制度を管轄する行政機関、ocialstyrelsen(日本で社会庁と訳されているみたいです)から出された文書では『入所者は 24 時間いつでもすぐに個別の必要に応じた支援が受けられるべきである。』という感じではっきりとした数字では表わされていません。
高齢者福祉については、コミューン(Kommun)と呼ばれる市町村にあたる自治体が責任を負っています。以前職場でコミューンの職員の方と話す機会があったので、本当に国の配置基準がないのか聞いてみたら「ない」との答え。理由は、基準を決めてしまったらその最低ラインさえ満たせば良いという風になってしまうから、との事。 コミューンごとに人員配置や専門職配置を義務づける事は出来る様なのですが、それが適応されるのはコミューンが運営する公立施設とコミューンが持っている施設を民間に委託し運営されている施設のみです。
民間企業が建てて運営している施設は人員配置を自由に決定できます。自由に決定できると言ってもさすがにあまりにも酷いと労働環境の視点で職員から労働組合に、人員不足ためのサービスの低下等で利用者や家族からコミューンに通報されると思います。
そして日本と違うと感じるのは人員配置を考える時に職場全体数から計算するのではなく、実際に現場で何人職員が働いているか、といった数え方をします。組合調べによるとコミューンによりかなり差があるらしいのですがストックホルム市(公立、民間)で平均、平日は 1 人の職員に対し 3.3 人利用者の割合らしいです。
2 . 勤務形態について
ーー日中1ユニット何人の利用者に対して概ね何人の職員を配置していますか。夜勤1ユニット何人の利用者に対して概ね何人の職員を配置していますか。
例えば、前の職場は建物の中に利用者 10 人のユニットが6つある老人ホームだったのですが、基本的に日中は利用者 10 人に対して職員 2 人、夜勤は 1 人で 2 ユニット・20 人をみていました。具体的には平日は 7:00~15:00、8:00~ 16:00、15:00~20:00、16:00~21:00 出勤の職員がいます。7:00~8:00、20:00~21:00 と休憩時間はユニットに 1 人 職員のみ、となってしまいます。夜勤は 20:50~7:10 で夜勤専門の職員がいます。そのため日中職員 1 人に対して利用者 5 人、とストックホルム平均よりもかなり低かったです(ケチで有名な民間最大手だったので)。
今の職場は色んな形のシフトがあるでごちゃごちゃしているですが、基本的には 7:00 出勤、8:00 出勤がいて 11:00~20:00 の勤務、午後に出勤して 21:00 までといった感じで朝と夕方以降利用者 9 人に対して 2 人の職員、 昼間は 3 人の職員がいます。
夜勤は職員 4 人で 54 人の利用者をみます。 2 ユニット 18 名に対して 1 人職員。6 ユニットあるので夜勤者 3 人、プラスユニット間を回って 2 人介助など をヘルプする職員 1 人という配置です。
シフトは 6 週間(施設により 4 週間や 5 週間)固定シフトがありひたすらそ繰り返し。そため何ヶ月も先のシフトも前もって分かるでプライベートの計画も立てやすいです。
休みの希望がある場合は有休を入れるか、有休を使いたくない時は同僚とシフト交換します。正社員だけでシフトを組むと人数が足りず空欄シフトができますがそこを埋めのるのがimanställd(時間雇用)と呼れるパート職員です。パート職員は何時間働くなど決まっておらず働きたいだけ、 もしくは施設にシフト入れてもらえるだけ働きます。欠勤が出た時や正社員が有休を取る穴を埋めるのもこのパート職員です。
もちろん正社員もシフトの穴埋め、欠勤者の代わりに働くこともあります。
パート職員は月に何時間働けるか保証もないのでいくつかの施設を掛け持ちしているのが普通です。 基本的に先述したユニットに必要な職員数を確保しなければならないので欠勤者が出たらパート職員、正社員に電話して出勤してもらう、もしくは午後に空きが出たら午前中に働いている職員にそのまま残ってもらえるか依頼します。
3 . 食事について
ーー日本ではユニットケアにおいて、なじみの食器をつかうように推奨され、利用者の持参したものを使い、フロアで洗ったり管理するということがあります。スウェーデンでも同じようなことをしていますか。
ーー食事介助について、日本では延命や健康管理を目的に無理な食事介助もみられることがありますが、スウェーデンではどうですか。身体的理由、認知症、本人の意思、意識レベル、どのような基準で「これ以上は介助しない」と判断されるのか。また、胃瘻が少ないと聞きますが本当ですか。
食器はみんな施設の物を使っています。たまに個人のマグカップを持っている方がいるくらいです。ユニットで洗ったり、利用者の部屋の流しで洗ったりです。一般家庭でも日本みたいに自分のお茶碗とお箸という感じではないので、そこにあまり意味がないのだと思います。
食事介助も普段から無理にはすすめません。まず介護する側もされる側も『食事はちょっと無理してでも残さず食べる』という感覚がないからだと思います。
色々な声かけを試しても本人が口を開けなければそこで終了です。もちろん少し時間をおいて再度勧める、別の物を勧めるなどはします。
食事の拒否が一時的ではなく体調や何となく普段との違いから「もう生きるのを諦めたな」と看護と介護が判断して医師に診てもらってから家族と話し合い看取りに入る感じです。もちろん栄養補助ドリンクなどもありますが、それは食べる、飲む意思があるけれど充分な量が食べられない方の為がほとんどだと思います。最終的に決定するのは家族なので看取りに入るのを受け入れられずに家族の希望でほぼ無理矢理、栄養補助ドリンクを飲ませて半年くらい延命した事もありました。
もちろん胃ろうもあります。わたしが今までにみた胃ろうの方は2名。どちらも認知症がなく嚥下機能に問題があるための胃ろうでした。
4 . リネン交換、清掃、入浴などについて
ーー日本では、施設毎のバラつきを押えるために、ある程度国の定めた「運営基準」によって決められている事が多いですが、スウェーデンの場合どうでしょうか。決められてること、施設毎の判断のこと、それぞれどのようなものがありますか。
リネン交換、清掃、入浴に関して、国やコミューンの基準は見つけられませんでしたが、多くの場合はリネン交換、掃除、入浴(シャワー浴)は週に 1 回以上プラス必要に応じて、だと思います。
シャワー浴は拒否する方も多く結果的に 2、3 週間シャワー浴なしなんて事も。
でも元々スウェーデン人はそんなに頻繁に入浴する習慣がなかったそうです。 それに乾燥してるからかあまり臭いも気になりません。バスルームにトイレとシャワーがあるので全身浴をしなくても ほぼ毎日、シモと腋下だけ軽く洗う方も多いです。
シーツ交換も必要に応じて行なっているので週1回以上換えることも多いです。清掃も同様で個室でキッチン、冷蔵庫もあり部屋の中で飲食することが多いので結果的に頻繁な清掃が必要になります。しかしこの部分は職員の個人的感覚に寄るところも多く、汚れていても気にならない職員は汚れた部屋やシーツをそのままにしておくこともあります。
施設によってシステムは違いますが例えば1日に 2 人シャワー浴介助(職員1人につき利用者1人)、シャワー浴を行なった方のシーツ交換、清掃を行います。それを月曜~金曜まで。それでユニットの利用者全員が最低週1回はシャワー浴できる計算です。一応は利用者毎に曜日を決めておきますが、認知症ユニットだとその時の利用者の気分によってフレキシブルに対応しています。
5 . 利用者の亡くなり方について
ーーオランダの老人ホームを取材したある記事で、1年に入居者の半数近くが亡くなっているとの記事がありました。これは日本よりハイペースですし、食事介助や延命に関する対応の違いがそうさせているのだと予測しますが、スウェーデンではどうでしょうか。在宅医が一般的と聞きますが、入院加療することは日本に比べて珍しいことなのでしょうか。
参考過去記事▼www.sow-the-seeds.com
施設で亡くなる方については、さすがに 1 年間で半分が入れ替わることないですが日本よりハイペースだとは感じています。 理由は、スウェーデンでも施設入所ハードルが上がり施設に入る頃には病状がかなり悪くなっている事も多いのと、 医療サービスの不足(あえて加療しないというよりネガティブな意味で。ストックホルムの医療機関はキャパシティをはるかに超えており高齢者などは後回しにされているな、と感じます)、積極的に延命のための治療をしない為だと思います。もちろん入院して病院で亡くなる方もいます。
わたしが以前働いていたユニットでは2年近く利用者の入れ替わりがないかと思っていたら半年くらいの間にバタバタと10名中4名が亡くなったことがありました。
現在働いている施設は 2018年5月オープンでまだ満床になっていないのですが、2019年1月の現時点で利用者 35 名、5 名の方が亡くなっています。これがスウェーデンで普通のペースなのかどうかは分かりません。
6 . サービス全般について
ーースウェーデンの方が優れていると感じる点、日本の方が優れていると感じる点、思いつくままにどのような感想がありますか。
サービス全般において、やはり職員の気配りなどは日本の方が優れていると思いますが、スウェーデンの利用者がそれを求めているかというとちょっと違うような気もします。スウェーデンでは個人の自立・意見が重要視されるため、ある程度距離を保つ、利用者が 1 人の時間を持つことも大切です。
スウェーデンで良いと思うのは利用者が朝ゆっくり起きられる事です。
スウェーデンの施設の朝ごはんは、ヨーグルトとミューズリー、サンドイッチ、オートミールなどユニットのキッチンで簡単に準備できる物です。
利用者が自ら起きてこない限りは8:00くらいから起床介助を始め、1人起こしたら食堂に誘導して配膳し、次の利用者を起こしに行きます。10:00くらいに朝食を食べ終わっていたら良いかなくらいの感じです。
中には毎日のように夜更かしして朝は 11:00 くらいまで寝ている方や、 7:00 くらいに部屋で朝食を食べて二度寝する方などもいます。そんな風にスウェーデンではみんな揃って何かをする事や規則正しい健康的な生活を強要されない事はとても良いと思います。毎日ようにビール (アルコール度数 2.2%~2.8%のものですが)や週末にはワインが提供されるのも良いと思います。
7 . ユニットケアにおける食事量や水分量の管理について
ーー日本の特養だと1日~カロリーの献立とか、毎食の食事水分量のチェックなどを行なっていますし、またそれがある意味『目標値』のように扱われることがありますが、スウェーデンだとどうしてますか?
というのも、ここまでの話を聞いていて、ユニットケアの真の実現のためには
- 利用者が自己決定自己責任を(潜在的に)自覚していること
- 家族、介護士、他職種もそれを理解し尊重すること
が求められるのではないかと思いまして、介護の仕事が『自己決定自己責任⇔介入』のバランスの中で行われていると考えると、日本は介入寄り、スウェーデンは自己責任寄りなのかな?と感じました。
でなければ自分のペースで寝起きしたり食べたり食べなかったり、日本ではそこまで自由な支援が出来なさそう(実際にここの共通認識を施設全体で共有できず苦労した経験がある)…と思うのですが。いかがでしょうか?
おっしゃる通りスウェーデンは自己責任寄りです。
Socialstyrelsenのサイトを見ても特に目標値はなく、難しい事を色々書いてますが結局は必要なエネルギー量は年齢、性別、活動量によって違うが高齢者は低栄養になりがちなので食事は大事です、くらいしか書いていません。
今まで働いた所では月に1回体重測定をし、BMI値から痩せすぎになっている利用者には栄養ドリンクをつけたり食事に粉のプロテインを混ぜたりしていましたが、食事、水分量を細かくチェックする事はほとんどありません。あまりにも食事量が少ない時くらいです。わたしの感覚としては細かい栄養よりも全体的にカロリーがとれてればOKなようです。
例えば食事量が少ない方がいたのですが、その方はお菓子は好きで食事の間に何度もコーヒーとクッキーなどでお茶をしていました。ナースもそれでOKといった感じでした。
洋食は魚や肉のソースに生クリームやバターを加える、コーヒーの牛乳の代わりに生クリーム、朝ごはんのヨーグルトにジャムをプラス、など単純にカロリーを増量する事が簡単です。
普段の食事において野菜が少ないとわたしは思いますが、昔はスウェーデンには野菜の種類が少なく今の80代以上の方は若い頃に生野菜のサラダとかなかったからサラダ食べない、という方も多いです。
逆に食べ過ぎて肥満の方においても、あんまり食べすぎにならないように気をつけてはいますが基本的には満足できるまで食べてもらいます。認知症利用者の場合は自己決定も尊重しつつ、職員がうまく食事量をコントロール出来るよう支援します。
糖尿病の方に糖尿食もある場合もありますが、わたしが知る限りほとんどの場合は普通食を食べていますし、おやつなども好きなだけ食べています。うちのナース曰く「好きなように食べたらいいよ、インシュリンの量調整すればいいだけだし」との事。これに関してはナースによっても考え方が様々で厳しいナースもいますが職員は基本的には病院じゃなくて、家なんだから~という感じです。
食が細い方も食欲旺盛な方も職員がなんとなく全体的に食事量を把握して食事が少な過ぎたり多過ぎたりしないようバランスをとっていますが、全ては職員の感覚です。
自由は自己責任が伴うというのが基本的な考え方で、家族も考え方は色々ですが基本的には親が好きなようにすれば良いとうい感じで、施設にその責任を求める方は少ないです。
でもたまに何でもかんでも施設の責任にして、自作のチェックリスト作って来るような家族もいますが。
スウェーデンで食事関係で気をつけている事は、食事と食事の間が11時間以上開かないようにする事。夕食から朝食まで食事を摂らないNattfasta(夜間断食)が問題となっており、夕食後、夜間に夜食を提供したり、早朝に目が覚めた方は朝ごはんの前の軽い食事を提供してまた二度寝してもらったりしています。これに関してはどのコミューンも力を入れていて夜中に抜き打ち検査に来たりします。
8 . 待遇について
ーー日本の場合、介護職の給与は全産業平均と比べる月10万円ほど低いと言われています。スウェーデンの給与水準と比べるとどうですか。
スウェーデンの高齢者施設における給料はググってみると色んなページが出てきてそれによってかなり差があるのですが、わたしの経験とスウェーデン人の同僚に聞いたところ、民間施設で経験なしの一年目が月給 20000kr~ 22000kr、経験年数が増えてきて最高で 28000kr~29000kr ではないかと。
「アンダーナースの資格を持ち長年働いているのに 22000kr~23000krで働いている人も多くいる」とは同僚の言葉です。
公立施設はもっと待遇が良いようです。スウェーデンでの経験年数が約 4 年間のわたしでズバリ 25000kr。多分、平均くらいではないかと思います。こちらは給料の面接時にいくら欲しいか聞かれて交渉するので言ったもの勝ちみたいなところがあります。
そして、みんな 100%フルタイムで働くのではなく、正社員でもだいたい75%から100%の間で働いています。個人のプラ イベートとの兼ね合いもありますし、雇用主があまり 100%で雇いたがらないのもあります(パートでシフトを埋めた方が安上がりだから)。わたしは80%で働いているので月給 25000krの80%、20000krが基本給、それプラス夜間、土 日・祝日手当がついて税金引かれる前がだいたい 23000kr~24000krでそこから税金引かれて手取りは毎月18000kr前後(2019年1月のレート、1kr=約12.2円)といった感じです。
さて、この手取り18000kr、日本円だと現在のレートで約22万円です。交通費は出ませんし、ボーナスもありません。
スウェーデンは物価も高くコンビニでペットボトルのドリンク買うとだいたい21kr(¥260)、カジュアルなレストランでランチを食べようと思ったら最低でも 120kr(¥1480)、マクドナルドのビックマックセットが74kr (¥915)、スタバのトールサイズキャラメルマキアート47kr(¥574)、ストックホルムで賃貸のワンルームで6000kr (¥74000)。でも超住宅不足で賃貸はほぼナシ。わたしを含め多くの人(特に若者と移民)がかなり割高な又貸しや間借りで住んでいます。
わたしは以前、日本にいた時は物価や家賃もそこまで高くない地域に住んでいたこともあって、スウェーデンの給料の方が物価から見ると日本より低く感じます。 良くネットにあがっているスウェーデンの介護士は公務員で給料が保証されているというのは全くのウソです(もしかしたら30年前くらい前はそうだったのかも)。
スウェーデンの介護職も確か平均より10000kr(¥120000)くらい低いはずです。
スウェーデンは介護は移民(難民)の仕事って感じで、介護がやりたいからやるんじゃなくて他に仕事がないからやっている人も多く、職員の意識の差が大きいです。
スウェーデンの事を学ぼうとせず、利用者が育ってきた時代やスウェーデンの文化の事を知ろうとしない人も多いのが残念です。差別的に聞こえるかも知れませんが元々持っている価値観や道徳観が本当に理解できないほど違うので日本も移民を受け入れる事に関しては慎重になって欲しいです。問題は日本(やスウェーデン)が人手不足なんじゃなくて介護が重労働でそれに見合ったお給料をもらえないから働き手がいないだけなんだと思うのですが。
9 . さいごに
ここまでが、今回伺うことの出来た内容になります。
いかがだったでしょうか?
例えば人員配置や業務量などでは羨ましいと思うところもある反面、社会的地位や処遇については私たち日本で働く介護士にとっては都合の悪い事実を突きつけられる内容でもありましたね。スウェーデンの介護士は待遇も良いし専門性も高いしモチベーションも高く輝いている!そんな先入観を良い意味で壊してくれる、大変貴重なお話だったと思います。
雇用方法の違いや文化の違いも興味深い。
細かな感想については、これを見る人によっても変わってくると思いますので、私はあまり多くは語らないようにしようと思いますが、一点だけ。
『個別性と自己決定自己責任を重視する文化』、今回お話を伺う中で、私が最も印象に残り、また日本とのギャップと感じたのがこの部分でした。
おそらく日本人でも多くの人は「マイペースに自律的に過ごしたい」という思いを持っているはずです。
そして、それを叶えるために日本でもユニットケアが導入されました。
日本では少なすぎる人員配置が一番の課題ですが、もう一つ、この価値観の共有というところが非常に難しいと感じています。
実際、施設で介護をしていると、日本では利用者も家族も「みんなと一緒なら安心、一緒じゃないと不安」という潜在意識を持った人がとても多いように感じます(認知症の症状がそれを更に加速させる)。皆で食事、皆でお風呂、が結果的に安心につながっていたり、規則正しい健康的な生活につながっている側面も否定できません。
また介護する側も、健康管理などを理由に利用者の個別性や意思を尊重しない雰囲気があります。利用者が認知症だから、それで何か問題が起きたら大変だから、といった背景もそこにはあります。
自分のペースで、自分の判断で生活して、その結果に対しても自分で責任を負う。周りもそれを尊重する。
そのような気質が少ない(と思われる)日本人には、人員配置の改善と併せて、ここのマインドの転換こそが、真のユニットケア の実現には必要不可欠な要素なのではないか感じました。
今回Aさんには、お忙しい中私の質問に対してとても丁寧に、じっくりと答えて頂きました。感謝してもしきれません、本当にありがとうございました!
この記事が少しでも施設介護に携わる多くの人のところに届くことを願って…