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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(2 / 3)

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか、第二回です。

前回は制度面において

  1. ユニット型施設はこれ以上増やさない方が良いのでは?
  2. ユニットケアの現場運営について、従来型の手法を取り入れた中規模ユニットを目指した方が良いのでは?

という2つの提案をさせて頂きました。
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今回は、この2つ目の提案『従来型の手法を取り入れた中規模ユニット』の具体的な運営方法について綴っていきます。

思いつく事を順不同で語っていきますので、ややまとまりのない文章となっていますがどうかお許し下さい。

※今回のブログの内容は、実際に従来型施設、ユニット型施設で働いている人でないと理解できない内容を多く含みます。そのため、それらの施設経験のない方には分かりにくい部分もあるかと思いますが何卒ご了承くだい。

 

[目次]

 

 

はじめに、中規模ユニットケアの運営について

まず、この中規模ユニットケアは、隣り合うユニットと色々合体する事を基本とします。

「ユニットケアらしく〜」や「ユニットケアだから〜」と言った理念は一旦忘れて下さい。これまでも言ってきたように、十分な人数を配置せずして、それを追い求めても辛くなるだけです。

職員が安定して働ける仕組み、周辺業務よりも直接介助にゆとりを持って集中できる仕組み、職員の増減や変化にあまり左右されずに安定したサービスが提供出来る仕組み、これを最優先事項と考え話を進めていきます。



1 . 職員配置について

本来のユニットケアでは、基本的にはユニット毎に職員を固定配置し、その職員たちでケアを行っていく事を目指しています。

しかし中規模ユニットでは、隣り合う2ユニット、20人の利用者に対して一定の職員を固定配置するという形をとります。

このようなイメージです▼

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なぜこのようにするかというと、そもそも1ユニット固定の職員で毎日をやりくりするというのは至難の業でして、わずかな人出不足や欠勤などがあれば他ユニットからヘルプが必要という事態に陥ります。

その際に、普段ケアに入らない他ユニットの職員が来るということは、ヘルプに入る職員にとっても、ケアを受ける利用者にとっても非常にストレスになるんですね。

また、夜勤は初めから2ユニットを1名の職員で見るように設計されていますから、普段全く関わりのない職員が夜勤の時だけは関わるというのもおかしな話です。


※注意点

上記の職員配置ですが、厚労省令の運営基準において「ユニットごとに、常勤のユニットリーダーを配置すること。」と定められています。そのため、20人の中規模ユニットに対して役職者(リーダー)が一人という状態はアウトということになります。

例えばですが「リーダー(〇〇ユニットリーダー)」「サブリーダー(△△ユニットリーダー)」のように、本音と建て前を両立した体制を辞令も含めて構築すると同時に、これに対する職員の理解も得なければいけません。

ちなみに、単にユニットリーダーという横並びの役職を2名置くことは、2トップ体制となり意思決定の妨げになりますのでお勧めしません。



2 . 職員の動き方や連携について

それからもう一つ、現在のユニットケアのデメリットの一つとして上げられるのが、隣り合うユニット同士の連携が難しい点が挙げられます。

Aユニットは食事介助者が多くその日出勤している職員も少なくバタバタしている。かたや隣のBユニットでは介助の手がかかる人も少なく出勤者も多い、職員同士が優雅に談笑している。

Aユニットでは入浴介助に人が出せず、このままだと週末大変なことになりそうだ(週に2回は利用者に入浴してもらわなければいけないので)。かたやBユニットでは順調に毎日入浴介助が進み、土日は職員同士が優雅に談笑している。

大げさな例を上げましたがユニット間の連携は、職員同士(特にユニットリーダー同士)の連携がよほど強力な場合か、ルールを定めシステマティックに運用している場合でないと上手くいきません。

また、このように連携が出来ていない状態というのは、言い換えるならそこにある労働力を効率的に活用出来ていないということでもあります。

合同ユニットでは、これまでユニットごとに行っていた職員の動きを変えます。見守りなどのハード面での都合が許すならば、職員の動きを以下のようにすることも考えます▼

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ユニットケアは『狭く深く(10名で1ユニット)』利用者のケアを目指したものでしたが、今の人員配置でそれをするには極端すぎました。もう少し『広く浅く(20名1ユニット)』した方が適切であろうというのが私の考えです。



3 . 利用者の生活スペースについて

次に利用者の日常生活、とりわけ食席などフロアでの過ごし方についてです。

ここでも2ユニットを一つの空間と考え行います。

食席というのは、介護士が気を配っていることの一つです。

利用者同士の相性、食事介助や見守りの都合など…

より利用者が快適に、安全に、業務上も効率良く、これらを考えながら席を決めていますが、1ユニットで出来る範囲では選択肢があまりに狭いため、ベストな状態に出来ない事があります。

2ユニットを合同として食席を考えると、ユニットをまたいで相性の良い利用者が一緒になれたり、介助が必要な方にまとまっていただく事で見守りがしやすくなったりと選択肢が増えます(いわゆる基本のユニットケアの考えからはこれを良くないとする風潮もありますが)。

また介護士の動きとしても、これまでの体制では一人の介護士が食事介助をしながら下膳や口腔ケアなども同時進行で行わなければなりませんでしたが、合同化をすれば食事介助に集中する職員と、配膳下膳口腔ケアなどを行う職員と、それぞれがそれぞれの仕事に分担して集中して行う事ができるようになります。



4 . ハード面について

上記の利用者のフロアでの過ごし方に関連することですが、隣り合うユニットを繋ぐ出入口が普通の一つの扉しかない場合、基本的には常時開放しておくことを勧めますが、本当はもっと解放感ある状態で一体的になっていた方が良いと思います。

もし、大きな可動式壁などで2ユニットを区切っている場合、開放して大きな1ユニットのように活用することをお勧めします。

ただし、実はこれもあまり良い事とはされていません。過去に厚労省からこのような通知も出ていますし、実地検査でも指摘されます。

参考▼
厚労省通知vol.249ユニット型個室の特別養護老人ホームの設備に関するQ&Aについて|ケアマネタイムスbyケアマネドットコム


厚労省的には「ユニットケア実現可能な介護報酬も設定しているのだから、きちんとやってくれなきゃ困る。」という主張ですが、実際にはユニットケア実現可能な報酬になっていないのはこれまでに説明した通りです。

参考過去記事▼
www.sow-the-seeds.com

 

また、ユニットケア推進の歴史をひも解いてみると、実は当初は隣り合うユニットがゆるやかに繋がっている状態というのは推奨されていました。実地検査の時だけ閉めるではなく解放しておき指摘されたら事情をきちんと説明する、くらいの気概が事業所側にも必要なのかもしれませんね。

参考▼
ユニットの独立性はどこまで必要か | 介護環境快適化講座


本当は建設段階から開放的に繋がれる、あるいは基本形を20人1ユニットとして、必要に応じて可動式壁で仕切れる(こっちがオプション位の感覚)ように出来たら最高なんですが。これには運営基準の緩和が必要ですね。

 

 

5 . 食事について

ユニットケアにおいて、より良い食事の場面を演出する方法として以下のようなことを推奨されます。

  • 利用者に馴染みの茶碗や箸を持参していただき、使ってもらいましょう
  • おかずを大皿で出し、皆に好みの量を伺いながら取り分けましょう
  • 刻みが必要な方には、一旦そのままの形をお見せしてからほぐして差し上げましょう
  • お米はフロアで炊きましょう
  • 配膳等、食事の準備を利用者と一緒にやりましょう等々…


これら、一旦全部忘れて下さい。

これらの手法は職員の自己満足の割に利用者の満足度にはあまり寄与しません。

個人持ちの茶碗や箸をユニットで洗う手間とヘルプにきた職員が見てどれが誰の?問題、刻みが必要な人が多すぎて介護士腱鞘炎なりそう問題、フロアで米炊き利用者ヤケドリスク問題、色々やって配り終える頃には食事冷めちゃってるよ問題、食介必要な人待たされる問題等々、語り出すとキリがなくなるのですが…

介護士の周辺業務を無駄に増やすだけです。厨房にやってもらえることは全部やってもらって下さい。しっかり分業して下さい。食器類は基本共用のものを厨房で管理してもらって下さい。ワンプレート食札で、名前と顔が一致すればすぐに配れるくらいにして下さい。

周辺業務をやる労働力を、迅速な配膳、丁寧な食事介助、丁寧な食後の口腔ケアなどに充てさせて下さい。



6 . 入浴設備について

これはあまりユニットの中規模化とは関係のない話なのですが、一点過去の失敗例として。

ユニット型施設だと、ユニットごとに個浴が設置されていますが、私が経験した施設では、片方のユニットには一般的な家庭と同じ浴槽(普通浴)、隣り合うもう一つのユニットには浴槽をまたぐ事が出来ない人でも入れる特殊浴槽(リフト浴)がありました。あとは施設全体に寝たままの姿勢で入れる機械浴室が1室。

これはどう言う事か。

例えば〇〇ユニットのAさんはリフト浴ですが、リフト浴は隣の◇◇ユニットにあるので、場所を貸してもらうと言う事になるんですが、介護度の重度化が進み2ユニット合わせて20人の利用者のうちほとんどの方がリフト浴となったらどうでしょう。

人出があっても浴室が足りず入浴させてあげられないって事態に陥るんですよね。

私がいた所では実際この状態になり、違う階のユニットに内線して浴槽が空いているか確認して、利用者と一緒に出張入浴させてもらったりして対応してました。

建設段階で、どのユニットもリフト浴にしましょう。リフト浴と言ってもそんな大げさなものでなくて、普通浴で入れる方には普通に入って頂くことも可能なタイプです。

リフト浴、イメージ▼

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出典:http://jyu-cen.com/ご利用者様、ご家族様、ケアマネージャー様へ【-4/



7 . 照明について

フロアの照明について、家庭的かつ落ち着いた雰囲気を演出するためにオレンジ色(白熱灯のような)の照明を使う事があります。

私が以前勤めていたところがそれでしたが、感覚的にですがあまり良くない気がしています。

夕食どき〜寝るまでの時間帯には良いのですが、日中もその照明だと利用者の活動意欲が削がれるような印象がありました。入浴がより億劫に、トイレ行きたくない→椅子までぐっしょりとか。日中は青白い蛍光灯色の方が良いのではと考えています。

寒暖色を調整できる設備なら良いのですが、私のいたところは調整できなかった。



8 . 24時間シートについて

従来型施設ではアセスメントの様式として『包括的自立支援プログラム方式』というものが一般的ですが、ユニットケアでは『24時間シート』というものを使う事が推奨されます。

利用者個々の生活リズムに合わせてケアを提供することを目的に開発された様式ですが、実用性という意味ではハッキリ言ってイマイチです(どちらかというと重度の方で時間ごとに細かな介入が必要な利用者に適している)。

情報共有の利便性、作成や更新時の手間などを考えると、24時間シートは使わず、これまで通りのアセスメントをした方が良いと思われます。

どうしても24時間シートを作る場合には、なるべく簡素に仕上げるようにしましょう。パッと見てわからないような細かい書類は作った人の自己満足で終わります。これらの書類はどれだけ効果的に活用できるかが重要で、そのためには気軽に目を通してもらえるくらいの情報量の方が良いです。細かく沢山書けば良いというのものでもないので注意して下さい。



9 . ユニットケア運営にまつわる嘘

24時間シートと職員の動きについて

なぜユニットケアでは24時間シートを使うのか。

という話ですが、これはこれまでの『施設のスケジュールに利用者の生活を当てはめる』という考えから『利用者個々の生活リズムを尊重し、職員がそれに合わせた働き方をする』という考えに改めようという考えに基づきます。

例えば、下の図をご覧ください▼

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Aさま、Bさま、Cさまの3名をベッドから起こし食堂へご案内、朝食を提供する場面の職員の動きのイメージです。

左の図は利用者個々のペースに合わせて介助を行なった例。右の図は施設のスケジュールに沿って一斉一律に介助を行なった例です。

この時、ユニットケアを勧める人はこう言います。

「作業の順序が変わっただけで実は作業総量は変わらないのだ。職員の意識次第で実現できるのだ。」と。

これが嘘なのです。

作業というのは、一つの動作を続けて行なった方が効率が良く、Aの作業からBの作業へと切り替える際にはロスが生じます。

一見作業総量は同じに見えても、実際には作業を細切れにしている分だけ左の方が効率が悪くなり時間がかかります。


またもう一つ問題になってくるのが食事介助の問題です。

食事介助が必要な利用者がいる場合、左のやり方だと利用者を一旦待たせて、他の方の介助に入らなければいけない場面が出てきます。

対象となる利用者の食事ペースや疲労に配慮しつつ介助を行い、自己摂取される方の安全も見守る、全てを満たすとなると右の図のやり方が適している事が多いのです。

ユニットケアにおいては、施設のスケジュールに利用者の生活を当てはめることは悪、施設スケジュール=悪、みたいな言われ方をします。

しかし、これも誤解です。きちんと人員配置を整えた良心的な施設であれば、実は「施設のスケジュール=大きな満足はないが大きな不満もない、最大公約数的にメリットのあるスケジュール」なんですよ。

三食きちんと食事を摂れて栄養バランスが良かったり、朝晩のメリハリがついて生活リズムが整ったり。基本の生活リズムとしては必ずしも悪いことばかりじゃないんですね。

また、日本人の気質かもしれませんが「みんなと一緒じゃなきゃ不安」という方もとても多いです。「利用者の希望=みんなと一緒なら安心」ということもよくある話で、結果的に皆が似たような生活リズムに収束していくことも多いです。

それに従来型的なやり方でも、施設スケジュールを基礎とした上で、利用者個々の希望や状態に合わせて臨機応変に対応することは出来ますからね。


8時間夜勤にすると日勤者が増える

ユニットケアを実践するのに合わせて勧められるのが3交代制(8時間夜勤)です。

従来型施設の頃から多く採用されていた2交代勤務(16時間夜勤・ロング夜勤)では、1回の夜勤あたり2日分の労働を行なっていました。

「8時間夜勤にすれば1回の勤務あたり1日分の労働だから、残りの1日分が日勤に当てられる」という理屈です。

これ、嘘ではありませんが本当でもありません。

結局のところ職員一人当たりの労働力の総量は週40時間と決まっていて、それをどの時間帯にどう分配するのかという話ですから、16時間夜勤を8時間夜勤にしたから魔法のように人が増えた!ということはありませんのでご注意ください。

ここではどちらの方が良いということは言いませんが。

次回(第三回)、職員の勤務形態についてももう少し詳しく書いていく予定です。



10 .  一番の壁は職員の意識

施設の事情によっても違うとは思いますが、私が以前勤めていたユニット型施設というのは新規開設した施設でした。

そのためでしょうか、集まった職員は皆ユニットケアに対する憧れや理想を描いている人が多かったです。「ユニットケアは素晴らしいんだ。」「それを実現できれば皆幸せになれるんだ。」という先入観です。

他職種の長もそうでした。

そのため、利用者のことを考えての提案であっても「それはユニットケアじゃないから」という原理主義的な形で却下されることも多かったです。

ですがこれまでも説明したように、ユニットケアの実現のためには充実した人出が必要不可欠ですし、それを満たさないまま夢に向かうのはただの無謀です。自分たちの夢や理想によって自分たちの首を絞めてるという話です。

今何も困っていない施設であれば取り急ぎ改革をする必要はないと思いますが、うまくいっていない施設は今一度、従来型に対してもユニット型に対しても先入観を捨てて、何が利用者職員にとって最善なのかをフラットな目線で向き合ってみてはどうでしょうか。


 

さいごに注意点

最後に注意事項なのですが、ここで記した『中規模ユニット』案ですが、法的にはグレーとも思える部分もあり、例えば実地検査などが入った時にどのような指摘を受けるかは分かりません。同じことをやっていても自治体によって判断が異なる場合もあるかもしれません。

また、ここでの提案は「こうすればうまくいくかも」という私が考える仮説の域を出ておらず、実証結果や統計的な保証は出来ません。

何でもかんでも中規模化&従来型の手法を、というやや極端な主旨で話をしてきましたが、建物の設計などによっては必ずしもここで挙げた事が最適解にならない場合もあります。

あくまで参考になる部分があれば、使える部分を上手に使っていただけたらと思っています。

個人的には運営基準の緩和が望まれるなぁと言う思いと、今実際にこうした運営を行なっている施設の事例を縦(現場〜経営〜行政)横(施設間)もっと共有できるようになれたら良いのになぁと言う思いがあります。


日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか、第二回はここまでとなります。

次回(第三回)が最後となりますが、そこでは中規模ユニットケアの運営方法の続きとして、必要な職員人数や勤務形態などについてシミュレーションと、この話のまとめを綴れたらと考えています。

最後までお付き合い頂きありがとうございました!