Sow The Seeds

介護の現場から リーダーのためのブログ

「介護主任が常に現場に入っている施設」は危険

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3月になりました。

多くの職場では平成30年度の人事異動や昇格などが発表され、新たな組織編成の準備に追われているところではないでしょうか。


ところで、介護施設によくある役職と言えば「介護主任(あるいは主任介護士)」

いつも思う事ですが、この役職の働き方って結構難しいです。

ある施設では、主任がフルに現場に入り、マネジメント業務は長時間の残業でなんとかしている…

ある施設では、主任が一切現場に入らず、現場を把握せず、でもトンチンカンな注意や施策を行なって介護士を振り回す…

人によって「介護主任の働き方はこうあるべきだ」っていう捉え方が様々なため、よっぽど上手くやらないとどこかしらに不満や軋轢が生まれます。

働き方にある程度裁量が与えられた役職だからこそ、上手にコントロールする必要があります。今回は、そんな介護主任の働き方について…

 

[目次]

 

1 . 受け持つ範囲の「適正な規模」とは

介護主任といっても施設によって組織図が様々なので、ここでは下のような組織図を想定して話を進めさせていただきます。f:id:sts-of:20180310003404j:plain

フロア毎、あるいはユニット毎に職員が配置され、それぞれにまとめ役となるリーダーが配置されています。

フロアをまたいだ全体の調整や管理を主任が行なっているという図です。

規模感としては、リーダー・ユニットリーダーであれば利用者10名〜30名、主任であれば50〜60名くらいが適正な範囲だと思います(それ以上になると利用者の日々の状況を把握しきれなくなってくる)。



2 . 主任はキャプテンか、監督か

昔ある先輩に「主任はサッカーで言うところのキャプテンみたいなものだから、現場にガンガン入ってみんなを引っ張ってなんぼだよ!」と言われたことがありますが、私はこの意見には反対でした。

上の組織図を前提とするならば、現場で皆を鼓舞し引っ張るのはリーダーの役目です。主任があまり出しゃばっちゃうとリーダーは存在感を失っていきます。自らの判断で職員を指導したり、フォローしたり、意思決定したりする事が出来なくなります。周りの職員も指揮者が複数いることで困惑します。

それじゃあリーダーの役割って何なの?と言うことになりかねません。

サッカーで例えるなら、ピッチに立って皆を指揮するのがリーダー、いくつかのピッチを同時に見ながら監督や采配を行うのが主任の役割ということです。

主任が現場に入る一番の目的は、現場の状況を把握するためです。現場に入る時はあまり出しゃばらず、何食わぬ顔で仕事をしているくらいがちょうど良いのです。



3 . 主任の役割は「未来の道を整える」こと

主任の役割、それは未来を見据えて皆が気持ちよく働けるような道を整備することです。f:id:sts-of:20180310015236j:plain

現場に入っているとある意味楽なんですよ。職員からは感謝されますし、良い汗かいて達成感もありますし、「仕事したー!」って気になります。

ですが皆と一緒に険しい道を歩いて、それだけで仕事した気になるのは大きな間違いです。

ただ何となく現場業務だけをしていると、あるとき思わぬ落とし穴に陥ります。


例えば…

ある職員の退職や異動が決まっているのに人員の補充を計画せず、その時になって慌てて皆が疲弊したり。

人員不足を経営層が気づいていないのに、それをそのまま放置して介護士さんが疲弊して退職者が続出してしまったり。

新人さんが入ってきても教育するためのマニュアルや職員体制ができておらず、新人さんがすぐに辞めてしまったり。

効率の悪い業務をそのままにして、いつまで経ってもみんなが楽になれなかったり。

Aフロアでは人員が充足し順調だけれど、Bフロアでは人員不足や介護量の増加が起こっているなど、フロアによって極端に業務負担が違ったり。


こうした未来のリスクを見据えて、先手先手で動くのが主任の役割です。そしてこれは常に現場に入りっぱなしでは出来ない仕事なのです。


参考過去記事▼www.sow-the-seeds.com


腰を据えて考える、計算する、作業する、そうした時間を意図的に作ることが必要です。

まぁ、未来のリスクをあらかじめ回避したところで誰にも気づかれませんから、ちょっと寂しい気持ちになることもあるんですけどね・・・泣



4 . どのくらい現場に入る?

ここまで挙げた理由からも分かるように、介護主任が常に現場に入っている職場、現場に入らなきゃ回らないような職場は危険です。

とはいえ、ある程度現場に入らないと現場の状況も把握出来ませんし、何かやろうにも正しい意思決定が出来ません。

では、どのくらい現場に入るのが理想的なのでしょうか。

職場の状況や、介護主任が抱えている業務の事情によっても違ってきますが、私の目安は、ひと月の勤務の3〜5割くらい現場に入るのが理想的です。

基本は、主任が現場に入らなくても最低限の現場業務が回るような状態を目指します。

その上で、どうしても勤務が組めない所に入ったり、一日の中でも入浴介助や排泄介助など忙しい所にスポットで入ったり、細かな穴を埋めるような形で現場に入るのを目指すのが良いと思います。f:id:sts-of:20180312040842j:plain


5 . 上司と折衝するのも主任の仕事

3〜5割現場、5〜7割がマネジメント等の主任業務にあてる。

安定したサービスを提供できるような人員配置、経営上も成り立つような人員配置を行った上で、自身の働き方も上手にコントロールする。

「そんなこと言ったって、それが出来る環境じゃないんだよ!」とお叱りを受けそうですが、それを実現するのも主任の腕です。

そもそもですが、そうした主任の働き方を、部署長や施設長と日頃から共有出来ているでしょうか?

今すぐには実現出来ない状況であっても、将来的な目標として上長と計画して、そうした体制に持っていくことは出来るはずです。

そのために、現場にどれだけの人員が必要かをきちんと計算し、上長と経営面も合わせて折衝することが主任には求められます。



6 . さいごに

介護現場全体を把握し、マネジメントする役目を担っている介護主任の仕事はとても重要です。

世の介護現場を見ていると、その重要性や必要なスキルがあまり認識されていない気がしています。


これからも少子高齢化は進行し、ますます老人ホームの人出は不足します。介護現場の崩壊は利用者にとっても、そこで働く職員にとっても悲劇です。

しかし今のままでは、需供のアンバランス以上に、うまくマネジメント出来ないことによる現場の崩壊が起こりますし、それでは悲しいと思うのです。

そのような事態を少しでも防ぐには「現場レベルのリーダー(主任)」の育成と活躍が必須です。

そろそろ介護主任の仕事は「根性論」から脱却するべき時期なのではないでしょうか。