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介護の現場から リーダーのためのブログ

なぜ介護士と看護師の溝は埋まらないのか?

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介護業界において、職種間の溝、職種間の争いは避けて通れません。

多職種が協力してケアにあたる…

その原則は誰もが理解しているにも関わらず、それでも互いの悪口、陰口、不満を言い合って争いが耐えないのが常です。

今回は特養を舞台に、どうしてこのような事が起こるのか、どうしたらこの争いは無くなるのか、或いは無くせないものなのか、考えていきたいと思います。

 

[目次]

 

 

1 . 看護師の不満

看護師は、よく介護士の不満を言います。
※実際に私が見聞きしたものを書きます。

  • 介護士が記録ばかりして利用者がほっとかれている。
  • 口腔ケアがちゃんとできていない。
  • 体位変換がちゃんとできていない。
  • 私たちがちゃんと処置やケア上の指示をしても、介護士がちゃんとケアしてくれないから利用者の状態が悪化する。などなど…




2 . 介護士の不満

介護士も、よく看護師の不満を言います。

  • 看護師はいつも上から目線だ。
  • 看護師は処置の時だけ来て、それが終わればフロアを離れられるからいいよね。
  • 医務室にこもってばかりだ。
  • 介護士がちゃんとケアをして状態観察や報告をしても、看護師は見にもこないし処置もまともにしないから、利用者の状態が悪化する。
  • 看護師は残業しないくらいの仕事量でいいよね。などなど…




3 . とある掲示板の論争

介護士と看護師の争い。

ちょうどこのテーマで盛り上がっている掲示板がありましたので紹介します。

 

看護師と介護士さんの関係

私は介護施設で看護師をしていますが、介護士さんからあまりよく思われていないようです。

若いくせに指示してエラそうだ、と陰口を言われているのを聞いてしまいました。

私はそう思われないように、できるだけ相手の様子もうかがいながら口調も穏やかに下手に出ていたつもりなのですが、その気遣いも無駄だったようです。
指示するって、指示するのも仕事のうちなんだから仕方がないじゃないか、と思ってしまいます。

おむつ交換とかしなくて楽で良いね、と言われたこともあります。
だってそれ介護士さんの仕事でしょう!
私看護師なんで看護師としての仕事があるんです!

看護師と介護士さんの関係|みんなの介護Q&Aコミュニティ

 

これに対する返答も様々ありますので、引用します。

介護士寄りの意見

介護士だって利用者とゆっくり丁寧に向き合いたいけど、実際は業務に追われて悲しい気持ちになってるんです。

うちの看護師も、食事は介護士が用意して当たり前。食後はティータイム。介護士は休憩中もバタバタ、看護師曰く私達は休憩ないから。良いよね処遇改善費貰えて‥入居者の薬や処置忘れてた‥と。介護士は私達が教育しないと使い物にならないし気づきもないと‥入居者の変化を伝えても現状維持でと。数字がでたら指示を出す何か間違ってませんか。

多くの施設では自分達は医療優先をいいことに医療以外の看護師に与えられた雑用は介護士に押し付けることが常態化してる。

オムツ交換や入浴介助が看護業務ではなく介護の仕事だと言うならなぜ看護学校や看護学部で学習カリキュラムの中に含まれているのでしょうか?それは看護師をやる上で必要だし今でも看護業務の一つだからです。

施設は看護と介護両方やるところ割と多いんだけどね。完全分離しているところなんてあるのかな?あるにしても少ないでしょう。 

 

看護師寄りの意見

側からみて、あー、妬み嫉みだね〜。幼稚だと感じてました。
まっ、国家資格といえど、全く違いますものね。

介護士は無資格でなれるかわりに重労働のわりには給与が安いです。看護師は資格がないと出来ない処置を行ない、介護士よりはるかに給与が高いです。介護士が看護師に敵対心や妬む気持ちを持つのは至極当然な感じで、実際仲が悪い職場しか見たことないです。

看護師を目指している介護福祉士です。医療行為ができない介護士にとって、看護師は、上司だと思っています。

じゃあ、採血や点滴、医師への報告…介護員さんできるの?と思ってしまいます。それをやってくれるのなら、食事介助もオムツ交換もやりますけど?

 

これらの意見を見ていて、また私自身現場を見ていて思ったのが、両者色々勘違いしていたり、互いの立場を理解しようとしていないよな〜と言うところ。

例えば「看護師からの指示」ですが、これは正確には「医師からのケア上の指示や助言」を看護師が介護士に伝えている場合も多く、一概に看護師は上から目線だとは言えないものです。そこは介護士側も理解しておく必要があります。

また、人数的にも看護師は介護士より少ないです。そのため介護士が本気で束になって対抗してきたら多勢に無勢。かなり心細い立場であることには配慮する必要があります。

逆に看護師にも理解してもらわなければいけないのですが、介護士は、看護師のように処置が終わったらフロアから離れてスタッフルームに篭って業務をするという事が出来ません。常時フロアで数十名の利用者の介助や見守りを行いながら、同時に記録などの作業もしなくてはいけない立場です。

「なんで〇〇が出来ていないんだ!」という不満は単純に手が足りないからです。医師に「なんで待合室で病人が待たされてるんだ!」と言っているようなものなのです。


4 . 資格や職域にまつわる不毛なやりとり

「資格」も、互いが頑なになる要因になっています。

看護師の出来る業務の中に介護は含まれますが、介護士の出来る業務に看護師の行うような医療処置は含まれません。f:id:sts-of:20180414004259j:plainこの事が、看護師側からは「採血や点滴、医師への報告…介護員さんできるの?」「妬んでるんでしょ?」といったマウンティングを生み、介護士側からは「オムツ交換や入浴介助も看護師の仕事の範囲なんだから」という手伝って意識を生みます。

ちなみに、介護士で看護師を妬んでいる人はほとんどいないです。介護がしたくて介護士になったのであって、看護師になりたくてもなれなかったから介護士やっている、という人はほとんどいません。利用者の生活上のお手伝いをしようと介護を選んだのであって、医療的な健康管理がしたくてやっているわけではないのです。

事実、「入院中に褥瘡を作ってきた利用者が介護施設に戻ると治る」「入院中に不穏であった利用者が施設に戻ると穏やかになり活気が戻る」という事があります。

これは「疾患を見る医療」と「生活を見る介護」の違いによって起こるものであり、やろうとしている事の視点がそもそも違うのです。



5 . 改善策

さて、このような状況の中果たして解決策はあるのでしょうか。

結論は「解決する方法はある。しかしそれは果てしなく難しい」 と言わざるを得ません。以下に書きます3つの条件をある程度満たせれば、多少は状況は良くなるかもしれません。

① 業務量、労働条件を公平にする

前述した掲示板の意見にもあるような「看護師に出来る仕事」「介護士に出来ない仕事」といった業務内容については議論するだけ無駄です。

資格がないと出来ない事、資格がなくても出来る事、いずれも所詮はただの「作業」です。

単純に互いの作業量に目を向け、なるべく負担が偏らないようなコントロールをする事。それによって不平等感を和らげる事が必要です。

例えば私の所属する法人では、看護師に比べると介護士の方が業務量が多く、残業も発生しやすい状況です。また、直接介護以外の周辺業務(行事、委員会など)も介護士は抱えているけど看護師は抱えていない。人事異動も介護士はあるけど看護師はない。といった状況があり、単純に業務量と労働条件において差があります。
※こうした状況が生まれる背景には、介護市場における看護師の希少性があります。看護師の確保は介護士以上に難しいです。また所属する人数が少ないため、一人辞めるだけでも経営を直撃する打撃になります。そのため施設は看護師をある程度優遇せざるを得ないのです。

このような状況では不平等感が助長されるのは避けられません。

施設によって事情は様々であると思いますが、負担の軽い方がまずは歩み寄ることが必要です。


② 全ての職種に精通した上司の必要性

介護施設における看護師の仕事内容や働き方は、聖域、アンタッチャブルになりやすいです。

施設管理者は、「介護士」→「相談員」→「管理職、施設長」というキャリアを積む人が多いため、「介護、相談業務については分かるけど、看護業務については分からない。だから口が出せない。」という状況に陥りやすいです。
※この話は介護事業を主とする社会福祉法人を想定しています。病院を母体に持つ医療法人などではまた事情が違うかもしれません。

ここに既得権が生まれます。

看護師は他の人が知らないのをいいことに、自分たちに都合の良い働き方を主張しやすい環境になります。

管理者たちは、直接的な医療処置はできないにしろ、実際に一定期間看護師と一緒に仕事をし、業務内容、業務量、一日のスケジュール、週間・月間のスケジュールなどを把握しておくことです。

職種間で協議するような問題が発生した時に、公平なジャッジが出来るようにしておくのです。

上からの目や口出しが、全ての職種に公平に入る環境であれば、職員たちの不平等感を和らげることにもなります。


③ 失礼なことは言わない

私は、ある程度分業にして、互いに別々の業務をすることには賛成の立場です。

オムツ交換、入浴介助などを看護師にやってもらいたいと思ったことはありません。

中途半端な協力関係は「Aさんは協力的だけどBさんは協力してくれない。」といった新たな不満の種を生むからです。

役割分担、公平な作業量や労働環境、これらを整えたうえで、あとは「相手の立場を尊重し、踏み込み過ぎない。言っちゃいけないことは言わない」ことです。

仕事に限らず、世の中には「言っちゃいけないこと」が多々あります。

しかし現実には、あまり深く考えずそれを言ってしまう人が非常に多い!

例えば、先の掲示板にもあった「介護士は私達が教育しないと使い物にならないし気づきもない」と言った看護師の話ですが、相手の立場を理解していれば決して出るはずのない言葉です。自分がやっても同じようになりますから。

他者批判は思っても公言はせず、自らの仕事、自らの職域に集中すれば良いのです。


 

6 . さいごに

この3条件を満たすことが、実際にはかなり難しい事なのはすぐ想像できると思います。

特に「言っちゃいけないことは言わない」というのは、大人数で働く職場においては絶対に無理です。どうしても言っちゃう人がいます。

私は、せめて各職種の責任者くらいは、互いの立場を理解し部下をなだめるような事が出来るようでなくてはいけないと思っています。部下と一緒に、或いは自らが率先して他職種の悪口を言うようではダメです。

あとはサービスに影響のない範囲であれば、多少の不仲は気に過ぎないことですかね。所詮は内輪揉め、私たちの価値はアウトプットにあるわけですから。


究極を言えば、人間性が良ければ互いに仲良くなれる。しかしそれを容易にさせない環境、メカニズムがある。世の中むずかしいものですね〜。