皆さんは、ご自身の施設の組織図を理解し、日頃からそれを使いこなせていますか?
案外、組織のトップでさえ組織図に関して無頓着で、その結果うまくいかなくなる組織が世の中には沢山あります。
組織の営みは身体と似ています。職員それぞれの役割の違いや指揮命令系統の流れなどをよくよく理解し、共有しておくことが大切です。
今回は介護施設を例に、考えていきたいと思います。
[目次]
1 . はじめに
もうすぐ平成30年度を迎えます。
私の所属する法人では(私が働いている施設ではないのですが)今年度は昇格者が多くおりまして、それによる組織の再編成が起こっているところです。
その昇格による懸念事項も色々ありまして、外野ながら心配しています。
実際には以下のような役職者がおりまして、その部署の現場の人からは「誰が私の上司なの?誰に話通せばいいの?」という声を聞いています。
2 . 役職と職種、ごっちゃになっている問題
介護施設では、大きく分けると「介護士」「看護師」「相談員」という職種があります。
この中の相談員とは、入退所の調整や報酬請求業務など、サービス提供に関わる事務仕事全般を行ったり、家族・病院・他職種などの間いに立って橋渡し役を担っていたりする職種です。
介護士経験を経てから相談員になるというパターンの人が多いため、また収支に直接携わる職種であるため、結果的に「部署の偉い人=相談員」である施設が多いようです。
このような事情があるため、介護士が何か報告を相談員する際に、「上司への報告なのか、他職種への報告なのか」が曖昧になる事が多々あります。
その逆も然りで、相談員が介護士にお願いした事が「他職種からの連携要請なのか、上司からの命令なのか」が曖昧になったりもします。
こうした曖昧さ、気持ち悪さを解消するうえで、組織図を作りこむ事が欠かせない作業になってきます。
3 . 組織図が違うと、指揮命令系統が違う
上で紹介した施設ですが、実際に線を引いて組織図にしてみましょう。
簡単なことのようですが、実はこれをしようとすると、2パターン考えられる事が分かります。現場の人もそれによって困惑しているようです。
① 役職にフォーカスした場合
課長・係長・主任・リーダー…これら役職に着目して組織図を作るとこうなります。
見ていただくとわかるのですが、これだと各職種のまとめ役、実質的に部署をまとめているのは係長ということになります。
つまり、各職種は何か上申する際は係長を通す必要が出てきますし、それをしないでいきなり課長に相談なんかすると、係長は「何で自分を通さないんだ」とヤキモチを妬くことになりそうです。
また、係長の命令は絶対ということにもなります。ここで困りそうなのが、現場が課長の命令を聞いた時に、後から係長が「自分はそんなこと聞いてない」と怒るパターン。現場からしてみたら頭が二つあるというのはけっこう面倒くさいですし、気を使います。
また、仕事の量や内容にもよりますが、課長いる意味あるのかな?というような気がしないでもありません。
② 職種にフォーカスした場合
次に、介護・看護・相談といった職種に着目して組織図を作るとこうなります。
各職種のまとめ役は課長という形です。
この場合、係長の権限の及ぶ範囲は相談員に対してのみという形になります。
4 . 役職の意味
上記①②のパターンの違いは、それぞれ「役職の持つ意味」が違うことによって生まれます。
① 指揮命令系統を表すものとして
本来、役職というのは組織の指揮命令系統や報連相の流れを表します。
また、受け持つ権限の範囲、責任の範囲も表しています。
パターン①はその原則に沿って組織図を作ったものですが、前述した通り、2トップ体制とも言える状況にもなってしまうため、果たして組織運営上適切なのかと言われると疑問符がつきます。
② その職員の「格」を表すものとして
もう一つ、よくある役職の使われ方が、その職員の「格」を表すために役職をつけるというものです。
また、それをすることで役職手当てをつけ、長期間そこで働いている職員の役給与水準を高める狙いもあります。
この目的のためにつけられた役職は、指揮命令系統、権限責任の範囲とは別質のものになります。
この考えをもとに、職種のみにフォーカスし作られた組織図がパターン②です。
今回の事例に限って言えば、おそらくパターン②の方が皆働きやすく、組織も健全に機能すると思います。
5 . 部署の仕事、法人の仕事
あともう一つ。
上記のようにその部署に限っては不合理に思えるような役職でも、法人全体を見るとそうとも言えない場合があります。
うちの法人の場合ですが、役職によって法人全体で連携して行っている仕事もあるのです。
このような場合、多少不合理に見えても仕方ない場合も出てきます。
6 . さいごに
職員の異動や入退職によって、必ずしもその部署の役職者が合理的な配置でない場合という事は起こり得ます。
指揮命令系統、責任の所在、役職の違い、職種の違い…
それらを皆で理解し毎日の仕事に励む事が、気持ちの良い連携には欠かせません。大きな変化が起こる場合には、必ずその都度組織図の見直しを行って、皆で共有しておく事が大切です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!