とあるブログで、このような記事を見つけました。
要約すると
という内容です。
こうした事って、どこの施設でも起こり得ますよね。ただ、こうした出来事を「上層部のせい」とか「介護職は悲惨」とか、不満や絶望で終わらせて欲しくないと言うのが私の思いです。
だって、こうした事はこれからもなくならないし、愚痴ったところで何も解決しないから。
実際にこのような場面に遭遇した時に、現場はどうしたら良いのか。マネジメント層はどうしたら良いのか。今回はその事を考えていきたいと思います。
[目次]
1 . 基礎知識
まずは、身体拘束に関する基礎知識を簡単に振り返っておきます。
① 身体拘束ゼロへの手引き【厚労省】
まず、なぜ身体拘束がいけないのか、どのような弊害があるのか、何をすると身体拘束になるのか、これらの基礎知識については厚労省が手引きを出していますので、そちらを参照して下さい。
リンク:身体拘束ゼロへの手引き(厚生労働省)
上層部も、現場も、この基礎知識は最低限おさえておく必要があります。
② 身体拘束は全く出来ないわけではない
手引きにもあるように、3つの要件を満たしている時に身体拘束は検討されます。
冒頭に紹介した記事の例を振り返ってみます。
すでに転倒を繰り返し怪我をしたり、自ら冷蔵庫や棚を開け石鹸や雑巾などを口に入れるという事で、切迫性はかなり高そうです。
非代替性については、皆で話し合って判断する事なのでここでは言及しませんが、介護士の対応だけでなんとか出来る事ってそんなにないです。魔法じゃありませんから。
一時性ですが、現場が独断で行ったことではありますが、身体拘束は夜間のみで、日中はなんとか行わず対応していたようです。
③ 大まかな流れ
今では、身体拘束の廃止に関する指針や委員会が整備されている施設も多いと思います(実地指導でも指摘されますし)。
大変な利用者がいて、このままではどうにもならない、身体拘束も検討するべきではないかとなった場合、以下のような流れで組織的に対応します。
2 . 何が問題だったのか
冒頭に紹介した施設の例では、ここまで説明した身体拘束に関する組織的な流れが出来ていなかった、経営層も現場も知らなかった可能性が考えられます。
ちなみに、このような切迫した事態が発生した時に、このような手続きに導くのは経営層、マネジメント層の役割であり責任です。
現場からのSOSを聞いた時点で、もっと真摯に受け止め組織的に対応する必要があります。
現場から上がってくるSOSって、大抵は事が大きくなってから、ギリギリになってから上層部に伝わる事が多いです。伝え手と受け手とでは既に相当温度差があることにも留意が必要です。
また、組織的な仕組みが機能していたとしても、検討するのは人間です。
「とにかく介護士の対応でなんとかするべきだ!」と一方的に断じてしまっては思考停止ですし、理想論だけではどうにもならない時もあります。
ドライかもしれませんが、医療的な対応、身体拘束の対応も方法論としては選択肢に入れておくべきです。
3 . 介護士さんへ、奥の手
私の施設ではまだそこまで例はないのですが、今後どうにもならない事案が発生した場合には、現場職員に「施設のカメラで映像記録を残すように」指示するつもりです。
理由は2つです。
① 最も正確な記録だから
身体拘束や向精神薬を検討する場合、かなり詳細な記録を残す事が求められます。
時間毎の記録はもちろん必要なのですが、結局のところ実際の様子を見てもらうのが一番正確に伝わります。
② 現場の切迫感が伝わるから
利用者が叫ぶ、暴れる、介護士は放心せざるを得ないような状況…
文字に起こしても、その場の切迫感はなかなか他者には理解してもらえません。何度も言うようですが、実際に現場で対応している人とそうでない人とでは、どうしても捉え方に温度差が生じます。これは仕方のない事です。
利用者の危機的状況、介護士の疲弊しきった状況、どうにもならない現実を知ってもらうには映像が一番分かりやすいです。
4 . さいごに
身体拘束に関して適切に仕組みを運用すること。縦の連携、横の連携がしっかり取れて真摯に議論できること。
これらが噛み合えば、まだまだ救える介護現場はあるのだと思います。
この身体拘束に関する流れですが、経営層よりも現場の人の方が詳しい場合もあります。そのような場合には、現場から経営層を導く努力も必要です。「どうせ上は何もしてくれないから」と、勝手に身体拘束をしてもいけないです。どっちのせいとか腐らず、気づいた人から声を上げ導いて行く事が大切です。
正しい知識と信頼関係で、少しでも改善に向かう施設が増えることを願っています。