こんにちは、yuです。
よく人材育成の手法として、「上位者の仕事を部下にやってもらって、より高い視点を育てる。」という事を聞くことがあります。
ですがこれ、上司が楽するための言い訳に使っていませんか?と言うのが今回のお話です。
この方法論自体は決して間違ってるとは言えませんが、今回はそれをするにあたっての、7つの留意点を書き綴ります。
[目次]
- 1 . 『仕事を振る』の連鎖、必ず何処かにしわ寄せが行く
- 2 . まず『本来の役割』を教えなくてはいけない
- 3 . 作業だけ振っても意味がない。役割を振れ
- 4 . 振ったら確認、監督を
- 5 . 仕事全体のマネジメントを怠らないように
- 6 . 上の者が率先して早く帰る、の合わせ技は最悪
- 7 . それでも、仕事を振る技術は必要
1 . 『仕事を振る』の連鎖、必ず何処かにしわ寄せが行く
冒頭のイラストの通りです。
例えば、係長が主任に仕事を振る、主任がリーダーに仕事を振る、リーダーがいち職員に仕事を振る、いち職員は…はい、ここで行き詰まります。
これを考えずに「人材育成のため〜」と言っているだけでは思慮が足りません。
では、どのような所に留意すべきなのでしょうか?
2 . まず『本来の役割』を教えなくてはいけない
例えば、主任がリーダーに仕事を振っているとします。
リーダーは「あぁ、主任はこう言う仕事をやっているんだなぁ。」と理解するでしょう。でも、それだけの事です。
この主任は、肝心なリーダーの役割や仕事について、ちゃんと指導してあげられているのでしょうか?
仕事を振るより先に、その人(この場合リーダー)が与えられた役割をしっかり果たせるように関わってあげるのが、最もやるべき事のはずです。そこを疎かにして仕事を振ったところで、それは人材育成を言い訳にしてるに過ぎないのです。
3 . 作業だけ振っても意味がない。役割を振れ
主任がやっていた事務処理があったとします。
言い方は悪いですが、それはただの作業であって、ある意味誰でも教わればできる作業に過ぎません。それを振っても意味がありません。
振るべきなのは「作業」ではなく「役割」です。
例えば苦情の対応、あるプロジェクトの発案・実施責任者、外部機関とのやり取り、経営的な判断など…一段上の責任や、組織の顔と感じられるような「役割」を任せてあげる事が大切です。
4 . 振ったら確認、監督を
仕事を振っただけでは、人材育成としては不十分です。
進捗はどうか、仕事の質はどうか等、色々と確認、監督する事があります。むしろ自分でやるより気を使いますし、精神的には骨の折れる作業です。
しかし、それをやらなければ、部下は作業を押し付けられただけ。ただ作業をこなして何の達成感もなく終了です。与えた仕事に対して、きちんとフィードバックを返してあげて下さい。
そこをちゃんとやっておかないと、部下もそう言うものだと勘違いをして、さらに部下に「仕事を押し付けるだけ」をマネしてしまうかもしれません。
5 . 仕事全体のマネジメントを怠らないように
上で「どこかにしわ寄せがいく」と述べました。
部下の業務量、仕組み、これらをマネジメントしないで仕事を振るだけでは無責任です。
もちろん部下も一人の立派な人間ですから、1から10まで管理する必要はありませんが、時間内で処理できているのか、何に困っているのか、いないのか、上司が把握しておくことは必要です。
結局のところ、マネジメントの多くは「成果を得るための手段(作業)がある。この作業をどのような労働力分配で処理するのか」と言うことを考えなければいけません。ここを疎かにして、ただ単純に自分の仕事が楽になる、部下の仕事は増えていく、と言うことのないように注意したいところです。
6 . 上の者が率先して早く帰る、の合わせ技は最悪
しわ寄せを把握もせず放置したまま、ここでもう1つの言い訳が炸裂する事があります。
「会社の残業を減らすために、上の者が率先して帰る。」
これも、言葉だけ見ると決して悪いことのようには思いませんが、「人材育成のために部下に仕事を振る」➡︎「しわ寄せに気づかない、放置する」➡︎「上の者が率先して帰る」、この流れは最悪です。
これ以上言わなくても…分かりますよね。
7 . それでも、仕事を振る技術は必要
さて、これで最後です。
ここまで、仕事を振るのが悪いかのように書いてきましたが、そんな事はありません。きちんとマネジメントが機能している組織にあっては、この仕事をうまく振れる技術こそが、人材育成においても組織の成果においても、有効な手段であることは間違いありません。
以前、私が多くの仕事を抱えそれが滞っていた時、上司にこう言われた事があります。
「yuさんは1つ1つ順番に100点の仕事をしたいのかもしれない。でもこの案件については、まだ手付かずだから0点。このままだと、この案件については1年後も0点のままかもしれないね。いま部下にこの仕事を振ることで、もしかしたら30点の成果が組織にもたらされるかもしれない。0点のまま1年以上の時間を無駄にするか、今すぐ30点の成果をあげるか…yuさんなりに考えてみなさい。」
私は「良い仕事=質の高さ×早さ」だと考えています。
質の低さを、早さでカバーできる事もありますし、また「今でなきゃいけない」と言うタイミングの問題もあります。
この上司が言いたかった事もまさにそれで、自らが仕事を抱え込む事で、あるいは部下にうまく仕事を振る事で、成果に対してどのような影響をもたらすのか。これを真剣に考えるキッカケとなった、良い学びの機会でした。
何でも一人でこなせる程、自分は万能ではないですし、気力体力も有限です。最大限の成果をあげるために仲間とどう協働するか、これもテクニックの1つと言えます。
また、こうした視点で考えると、自分の得手不得手、仲間の得手不得手もより鮮明に見えてきます。皆が個人の強みを発揮し、組織として最大限の成果があげられる。そのような状態を目指す上でも、上手に仕事を振る技術を磨く必要があるのではないでしょうか。