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統計・歴史・心理学からみる、少子化の原因と豊かな社会に関する考察

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少子高齢化の加速は誰もが認識している社会問題の一つです。

今までの記事でも紹介した通り、急速な長寿化が進み高齢者で溢れかえった人口構造と、それにかかる社会保障のお金、当然国は若い人向けに十分なバックアップをすることが出来ない懐事情、ますます加速する少子高齢化。そんな悪循環に陥っているのが今の日本です。

参考過去記事▼


と言っても、今回お話したいのはそのような世代間の対立を煽るものではなく、少し違った視点です。

「統計・歴史・心理学からみる少子化の原因」から「豊かな社会って何だろうね」と言うやや哲学的な事を考えていきます。

 [目次]

 

 

1 . 統計から見る少子化の原因

まず初めに、なぜ少子化が進んでいるのか、一次的な原因を統計から見てみます。
※なぜ「一次的」と言うかと申しますと、統計はあくまで過去の事象の結果を表したものであり、なぜその事象が起こっているのかという「より根本的な原因」までは読み取れないからです。

統計を見ると「晩婚化」「未婚化」「夫婦の出生率の低下」がいずれも進んでいることが分かります。

① 晩婚化

厚生労働省の統計によりますと、昭和50年時点では平均初婚年齢は[男性:26.9歳、女性:24.4歳]で、その後緩やかに晩婚が進み平成27年時点では[男性:30.6歳、女性:29.0歳]となっています。*1

約40年の間に男女共4〜5年ほど晩婚化が進んだという事になります。晩婚であるということは生涯にもうける子供の数が少なくなる可能性が高いということです。


自分の周りに当てはめて考えてみても、早くに結婚した友人は子沢山が多いですし、遅くに結婚した友人は今ようやく一人目という段階です。

20代前半で結婚した人と30代で結婚した人とでは、子供の数が一人分は違ってきても不思議ではありません。


② 未婚化

晩婚化の問題以上に目立つのが未婚率の増加です。

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出典:第1-特-20図 生涯未婚率の推移(男女別) | 内閣府男女共同参画局

男女共5%を下回っていた期間が長かったのですが、今では男性20%強、女性10%強となっています。結婚する人が減っているのですから、子供も減るのは当然のシナリオです。


③ 夫婦の出生率の低下

上に挙げた人々が結婚から遠ざかっている現状だけでなく、結婚した夫婦の出生率の低下も大きなインパクトがあります。

調査によると1940年時点では4.27人、1957年時点では3.60人、2010年時点では1.96人と減少の一途を辿っています。

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出典:第14回出生動向基本調査/国立社会保障・人口問題研究所



2 . 歴史・心理学から見る少子化の原因

なぜ晩婚化、未婚化、出生率の低下が進んだのか。

日本経済の停滞や閉塞感、若者の貧困など諸説ありますが、私の考えは違います。よく言われている「お金がないから」ではないと考えています。

私が考える大きな原因は個人主義が強くなった事と選択肢が多くなった事ことです。


① お金はあるけど…(昔よりはね)

私の父がよく「俺が子供の時は、肉なんて年に数回祝いの席でしか食べられない高級品だった。」と言うのですが、いま貧乏していて肉が食べられない人ってどれだけいますかね?

健康な身体で、仕事を選ばず、怠けず毎日働けば、それなりに安定した生活は誰にでも出来ます。

今と昔、ピンポイントで見た時に物質的な豊かさは明らかに今の方が上です。


しかし普段私たちが実感する豊かさとは、昔の人と比べた時ではなく同じ時代の人たちと比べた時に感じます。

日本の高度経済成長を享受してきた団塊の世代が身近にいる。ここ20年あまりの経済停滞がある。若い世代の人達がこれらを見た時に、自分達の生活が先人たちのように右肩上がりに豊かになる事は想像しにくい現状があるのは確かです。


② 結婚観の変化

よく思うのですが、結婚をある種のゴールと考えた場合、結婚時点での貯蓄額とかパートナーの収入に着目しすぎな気がしています。

結婚した時は6畳一間からのスタート、徐々に豊かになるにつれ生活水準を上げていく。夫婦で苦楽を共にする。

そんな結婚観って今ありますかね?(昔がどうだったか知りませんが)

結婚する段階で互いに完璧を求めすぎてしまうのも、晩婚が進む要因なのかなと思います。


③ 豊かになると個人主義が強くなる

ドイツの経済学者ブレンターノ(1844-1931)*2は、19世紀末のヨーロッパの人口動態を調べ、平均所得水準は上昇しているにもかかわらず出生率は低下していることを発見した人物です。

社会の進歩とともに、若い人が楽しむモノやサービスの種類は拡大していく。そうしたモノやサービスを楽しむためには時間もかかるしお金もかかる。その結果、多くの時間とコストを要する出産・子育ては敬遠されるようになる。高い生活水準を維持するために子供の数を抑制するのではないか、と言うことです。

歴史を見ると、出生率の低下は富裕層から始まっているのです。

古代のローマ帝国、ギリシャ帝国、いずれもこうした事が原因で出生率の低下が起こり、そして滅びたのだと指摘する声があります。

参考▼

人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書)

人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書)

 

 

④ 選択肢が多いと選べなくなる

ビジネスの世界で有名な「選択回避の法則」と言うものがあります。

ジャムの試供品で6種類用意したものと、24種類用意したもの、どちらが購買につながるかという調査をしたところ、前者では約30%の人が購入に至り、後者では3%しか購入に至らなかったという話です。

選択肢が多すぎると、結局どれがベストなのか分からなくなる。だからどれも選ばない(選べない)という事が起こるようです。

参考▼ 

選択の科学

選択の科学

 


仕事にしろ、パートナー選びにしろ、ライフスタイルにしろ、現代社会はかくも自由に選択ができる社会になりました。

昔のように「男は仕事、女は家事!」みたいな価値観も無くなってきてますし。仕事も遊びも種類が多すぎて楽しすぎます。

私自身は、選べる事は人間らしさであり豊かさであるとも思っているのですが、皮肉にもこうした社会になればなる程、少子化の流れは加速していくようです。個人にとっての豊かさ(部分最適)が、必ずしも社会の豊かさ(全体最適)に繋がるとは限らないジレンマです。



3 . 人生とは「何を選ばなかったか」の連続

さいごに、少し哲学的な話を一つ。

こちらの絵をご覧ください▼
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未来には無限の選択肢があって、ふと過去を振り返るとたった一つの自分の人生がある。

人生って「何を選ばなかったか」の連続なんだなぁと、30歳を過ぎた頃からようやく感じるようになりました。

選べると言うのは本当に豊かでありがたい事です。

しかし選択肢が多すぎる現代社会においては、意識して何を選ぶか何を選ばないかを考えて、しっかりと自分の意思で決断(決断とは「断つを決めること」)をしていかないと、結局何も選べず流れに身を任せただけの人生になってしまうのではないかと、無性に寂しい気持ちになったりもします。

買い物でも「何にしようかな」と迷っている時が一番楽しかったりするけれど、人生は待ってくれないよと。

私は典型的な器用貧乏なもんで、ついつい興味の方向が散漫になりがち。全く困ったものです。


…さて、話をどう着地させて良いのか分からなくなってきましたので、今回はこの辺で失礼します。最後までお付き合い頂きありがとうございました!