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「仕事の報酬は仕事」は強者の論理

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「仕事の報酬は仕事」とは、ソニー創業者の一人である井深大氏が言った言葉です。*1

ソニーといえば、故スティーブ・ジョブズ(アップル元CEO)もあるインタビューの中で「本当に偉大な、日本のコンシューマーエレクトロニクスの会社があって、それがポータブルミュージック市場を支配していました。」と振り返る程、世界で一時代を築いた企業です。


「仕事の報酬は仕事」

今ではこの言葉だけが一人歩きし、様々なところで耳にするようになりました。でも私は、この言葉があまり好きではありません。

部下を都合良く頑張らせるための方便として使われているような気がしませんか?いくら頑張っても、実際には報われない人の方が多いと思いますし。
※井深氏はそんなつもりで言ったのではないと思います。ただ現代において、この言葉を悪用している人もいるのでは?と言う事です。

今回は仕事への向き合い方だったり、生き方であったり、そんな事を考えてみます。

 
[目次]

 

1 . 「仕事の報酬は仕事」の意味

まずはじめに、この言葉の意味を考えると大きく分けて2通りの解釈ができると思います。

 

1.目の前の仕事を大切に一生懸命やる事で、更に面白い仕事、やりがいのある仕事に結びついていく。

仕事というのはつまらない事、地味な事、やりたくない事も沢山あります。しかし、そうした目の前の事一つ一つに誠実に取り組む事で、自分の成長や周りの評価も高められ、ふとしたきっかけで大きなチャンスを掴むことがあります。そしてその掴んだチャンスを元にして、更なる成長へと繋がっていきます。



2.目の前の仕事を大切に一生懸命やる事で、次の注文、文字どおり仕事に結びついていく。

これは経営者の方なら分かると思いますが、そもそも仕事があるという状態がありがたい状態だったりします。仕事を得るというのは狩りみたいなもので、黙っていても自然に降って来るような甘いものではありません。良い仕事を通じて、更なる仕事へと繋がっていきます。


現在、多くの場面で使われているこの言葉の意味は前者だと思います。また、経営者より従業員の方が数が多いので、多くの方の解釈も前者でしょう。


2 . 報われない人がほとんど

「仕事の報酬は仕事」と言い切れる人は、仕事を通じて何かしらの社会的成功を得た(報われたと感じている)人がほとんどではないでしょうか。

正直に言って、多くの人が報われたと感じられるのは金銭的な報酬の多さであったり、社会的地位の高さであったりします。

しかし残念ながら、どんなに頑張っても報われない人の方が多いのです。報われるためには、自分の頑張りよりも外的要因が大きく影響するからです。

報われるための外的要因(条件)とは、例えばどのような事でしょうか。


報われる条件① 報酬の高い仕事に就く

利益率が高く、従業員に高い報酬を払える仕事に就く必要があります。あるいは、大企業のように高収入のポストが多く設置されている所に身を置く必要があります。


報われる条件② 成長性の高い仕事に就く

創業時のソニーも良い例ですが、今は小さな企業であっても、実力と運が良ければ高成長する可能性もあります。組織の成長に伴って、自身のキャリアも高成長できる可能性があります。

また報酬についても、現金だけでなくストックオプションなどの制度があれば、当初の株価から数百倍になっていたなんて事も期待できます。


報われる条件③  良い上司に出会う

どんなに良い仕事をしていても、それがキャリアアップに繋がるかどうかは評価する上司のさじ加減です。

残念なことに、本人の実力以上にその人のキャリアを左右してしまう要素かもしれません。

昔読んだある社長の本で『昔頑張った若手が今では幹部になっている』というエピソードを見ました。その幹部は仕事見てくれている社長に恵まれたのです。あるいは社長の見えるところで仕事ができたという環境にも恵まれていたのです。その幹部の仕事に疑いはありませんが、もしかしたら報われず影で涙している人もいたかもしれませんね。


報われる条件④  運がいい

多くの成功者が間違いなく言うことですが、運は大事です。報われるための要因は半分は実力、半分は運です。

頑張っている方向と、時代の流れや外部要因がピタッと合った時が特に最高です。

私自身、数年前に新規開設施設のオープニングスタッフとして開設前の準備から携わらせてもらいましたが、それをキッカケに得た学びが多くあり、それは本当に運が良かったのだと思っています。周りを見渡すと実力や伸び代がありながらも、それを活かす機会に恵まれないだけの人も多いのです。


そんなわけで、この「仕事の報酬は仕事」。言ったところでその人の事を実質的に救うことは出来ませんから、人に軽々しく言うのは絶対やめた方がいいです(自分に言い聞かせる分には良いですが)。



3 . 内的要因

報われるための外的要因①〜④を見てきましたが、当然内的要因、つまり自分自身の日頃の行いも大切です。

報われる条件① 腐らない

最も大切なのが「腐らないこと」です。

報われないなー、なんて事はしょっちゅうあります。頑張っていれば報われるとも限りません。しかし諦めて腐ってしまった人というのは、仕事に対しても人に対しても不誠実になっていきます。その態度は間違いなく周りの人には伝わりますし、自分の成長を妨げます。

スポーツの世界が分かりやすいのですが、努力しても報われるとは限らない、しかし成功者の中に努力してこなかった人は一人もいないのです。

 

報われる条件② 目先の損得に惑わされない

最近の社会の傾向として感じているのがこれです。

何でもかんでも目先の損得感情で、お得じゃないからやらない頑張らない。損する事はやらない。そんな空気を感じています。

「得より徳を取れ」

私が勝手に作った言葉で、自分に言い聞かせている言葉なのですが…

目先の損得より大事なものが、人としての「徳」だと思っていて、長い目で見た時にその方が結果的に得になることが多いのではないかと感じます。

目先の損得感情で動く人って、周りはすぐに見抜きますしね。


報われる条件③ 実力&勤勉

実力がなくても、運や人脈で引き上げられる人もいますが、それってどこかでボロが出ますし、内面的には豊かには見えません。

仕事に対して実力があること、勤勉で常に成長に貪欲であること。

いつ来るかわからないチャンスではありますが、実力がなければせっかく来たチャンスも掴めません。



4 . 結局は自分の「志」の問題

色々言ってきましたが、結局最後は自分の志の問題です。

自分はどのような人生を送れば満足できるのか、自分の人生や行動に対して納得が出来るのか。

周りと比べる事でも、周りに報いてもらう事でもなく、自分自身に納得が出来るかどうか。おそらく大事なのはそこなのかなと思っています。



5 . さいごに

最後に、歴史上の人物の「志」を感じる、好きなエピソードを2つ紹介します。

大久保利通

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明治維新の立役者の一人、大久保利通です*2

維新後は、政府の一員として腕を振るい、内務省の設立を通じ官僚機構の基礎を築いたり、国と地方の関係を再編成するなど、日本を一つの近代国家にするために尽力した最大の功労者と言われています。

彼の有名なエピソードの一つに、「公的な資金が足りないと私財を投じて何とかし、亡くなった時には借金を抱えていた。」と言う話があります。

自らの私利私欲のためではなく、正に自らの志のために生きたのだろうと感嘆せずにはいられません。


二宮金治郎

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彼もまた、己の志に生きた素晴らしい人物です。以前書いた記事です。ぜひご覧になってみて下さい ▼*3

自らが夢中になれるものがある。そのためには自らの損得さえ考えない。「中々そこまで出来ないなぁ。ついやった後の損得を考えちゃうんだよなぁ。」と思いつつも、そんな生き方には憧れてしまうのです。