ヒゲ、ピアス、金髪、マニキュア、タトゥー…
成人し社会に出た時に、身嗜みについて考えさせられる機会は多いです。上司に注意された事のある人もいるでしょう。あるいは上司として、新人職員の身嗜みを改めるために注意をしたり。
例えば
「なぜ髪を染めてはいけないの?」
「どのくらいなら良いの?」
「その基準の根拠は?」
「仕事はちゃんとしているのに?」
こう聞かれて明確に理由を答えるのって、案外難しいものです。
価値観が多様化する今、よほど強い上下関係や、細かい規定がない会社では『身嗜み』の観点から組織の秩序を保つのは難しくなってきています。「常識の範囲内で」の一言では通じない場面も多いです。
そう言えば、「多様性のある社会を!」と言って、頑なに長髪&ヒゲを貫き選挙に出ていた人もいましたね。*1
今回は非常識とされる身嗜みの善悪や、社会人にとっての身嗜みの意味について、長々と考察していきます。
[目次]
まずはじめに、「アウトと言われる見た目の共通点」と「なぜ周りに合わせて身嗜みを整えなくてはいけないのか」と言う事について考えてみます。
1 . アウトと言われる見た目の共通点
大まかに言うと
- 人工的にオシャレの為に手を加えた感じがする。やり過ぎ感がある。
- 周りから浮いている
この二つだと思います。
※「不潔に見える」も考えましたが、ここでは清潔である事は大前提として論じていきます。
ではヒゲやピアスなどはどうなのか、ちょっと個別に考えてみましょう。
① ヒゲの場合
ヒゲは自然に生えてくるもの、髪の毛や体毛と同じです。
ですから上記の「人工的に手を加えた」には、本来は当てはまらないはずです。論理的に「ヒゲ=悪」とは説明出来ません。
昔の偉人の肖像を見るとヒゲをたくわえた人の多い事。しかしいつの間にか、不潔感からかヒゲを剃ることが常識の社会になり、そこから浮いた事をすることは悪い事のようになってしまったようです。
加減が難しいですよね「無精ヒゲ」「ちょうど良いヒゲ」「カッコつけたヒゲ」「生やしすぎて不潔っぽいヒゲ」…じゃあもう全部剃っちゃえ!と言う感じでしょうか。
② ピアス、マニキュア、染髪
これは人工的に手を加えたものです。自然のものではありません。
しかし女性の場合、お化粧の延長線上にあるものとして適度であれば許容されることが多いようです。これも『適度』が人によって解釈が違うので難しいのですが…
これも社会の変化に伴って、徐々に許容範囲が広がってきている印象があります。
私が個人的に不思議に感じるのが「女なんだから化粧ぐらいしろ」と言う風潮。結構多いみたいですね。
別にすっぴんでも本人が良ければ良いのではないかと思います。自然の姿ですし。高い化粧品買って毎朝時間をかけて化粧することが、社会的に「やらなきゃいけない事」と強制されるのはいかがなものかと思います。
③ タトゥー(刺青)の場合
これも明らかに人工的に手を加えたものです。
日本においては刺青=反社会的と言う印象も根強いですから、「怖いなぁ」と見た人が不快な思いになり易いのは、タトゥーの宿命とも言えます。また「親からもらった身体に傷をつけるなんて」と言う道徳的な考えからも、良くない事と考える人が多いです。
数で見ても圧倒的に少数派ですし、浮いて見えます。
とは言え、タトゥーの歴史は古代からと古いものですから、なんだかんだ人間の営みとは切っても切れない”何か”があるような気もします。耳に穴を開けることがこれだけ普通の世の中ですし、身体に絵柄を彫る=悪と端的には考えにくいです。
私個人の考えとしては、趣味でやるのは自由ですが仕事やTPOに合わせて隠す(仕事に遊びを持ち込まない)事が大切かと。
このように、ヒゲ・ピアス・マニキュア・染髪・タトゥー、個々で見ていくとダメとされる理由はみなバラバラで、特にそれ自体を悪と決定づけるような共通の論理的根拠があるわけではありません。
明確な根拠のない、社会の空気によって良いか悪いかは決められています。人が脈々と生活を続ける中で、自然と形成される空気です。この空気が悪いとは言いませんが、「常識が必ずしも論理的な正しさを証明出来るとは限らない」と言うことは知っておいた方がいいかもしれません。
2 . なぜ周りに合わせて身嗜みを整えなくてはいけないのか
①「ファッション=自分」「身嗜み=相手」だから
私は、ファッションと身嗜みは違うと考えています。その違いとは『誰のためのものか』という違いです。
ファッションは自己満足のために自らの趣味趣向で行うもの、つまり遊び。身嗜みは相手がどう思うか、相手を不快にさせないために(相手に好感を持たれるために)行うもの。
ファッションは自分のプライベートにおいて出せば良いものです。仕事においては身嗜みが整っていれば良く、ファッション(遊び)の要素は持ち込む必要はないという考えです。
② 見た目も商品の一部だから
多くの物やサービスは、そこで働く人を介して提供されています。
どんなに良い商品でも、それを提供する人が「えっ?」って見た目で引かれるような人であれば買ってくれる人も減ってしまいます。逆に好印象であれば初見の人でも取っ付き易いでしょうし、リピーターも増えます、満足度も増えます。
そう考えると、従業員の見た目も商品の一部なのです。
飲食店なんかがわかり易い例です。
③ 無駄に減点を作らないため
ヒゲを生やしていても、何とも思わない人もいるでしょう。しかし100人中10人嫌悪感を抱く人がいたら、その人の第一印象は90点です。
ヒゲを剃っていて、それを不快に思う人は皆無でしょう。改めて良い感情もないけれど、特に悪い感情も沸きようがない。何もしなくとも第一印象は100点です。
これはヒゲに限らず、染髪やピアス等にも同じことが言えます。
第一印象が悪くとも仕事で挽回できる事はあります。しかし「私ってこんなに仕事ができて、こんな事考えていて、こんなに真面目で、こんな実績があって〜」なんて、その人の挽回のための話を聞いてくれるほど、相手も暇じゃありません。
身嗜みを整えておけば、無駄な減点を避ける事が出来ます。
④ 個人のポリシーとかどうでもいい
あなたがオシャレだろうがそうでなかろうが、ファッションに関するポリシーがあろうがなかろうが、他者から見ればそんなのどうでもいい事です。
感情的ですが、大人になるほどファッションに凝りすぎた人は変な目で見られる事が多くなってきます。そんな所にこだわってないで中身で勝負しようよ、と思われます。
3 . 気持ちよく生きる為の選択肢は3つ
さて、「大した根拠もないのに自分の好きな格好も出来ないなんて、やってらんないぜ!」と嘆いたところで仕方がありません。自分の好き嫌いに関わらず、世の中そういうものなのですから。
そんな社会で気持ちよく生きる為の選択肢は3つです。
① 所属するコミュニティに合わせる
一番無難かつ現実的なのがこれ。
働く業種や業界、地域、会社によって常識は随分と違います。
「郷に入っては郷に従う」「自分の所属するコミュニティの常識に合わせる」これが最も一般的な選択です。
仕事をしていると、自分の見た目のこだわりより大切なものが出てきたりします。例えばそれは成果です。
冒頭に挙げた選挙に出ていた人で言えば当選すると言う事。そのためには手段なんか選んでられないですし、あらゆる手段を使ってベストを尽くすべきでしょう。ヒゲを剃るだけで成果が上げられる可能性が高まるのなら、安いものです。
② 偉くなって変える
どうしても納得がいかないのなら、自分が偉くなってルールを作れる側の人間になるしかありません。
会社において、身嗜みの規制というのは品質管理の一部です。
これを緩和しても、自分なら社内の統制を守りしっかりと利益が上げられると判断するならば、そうしたら良いのです。
③ 所属するコミュニティを変える
転職なりして、自分の居場所を変えるという方法です。
ここまでしてこだわりを通したい人は稀だとは思いますが、これも方法の一つでしょう。
4 . さいごに
今回はどちらかと言うと働く側の立場から、身嗜みについて考えてみました。
最後に伝えておきたいのは世の中自分だけじゃ生きていけないし、周りの人に支えられて生かされてるから、あまり『自分可愛い』な人は信用されないよという事です。
こう考えると「周りの常識に合わせると言う事は、周りの人を立てる事。」とも言えます。
これを踏まえた上で、あとは自己責任で楽しく人生を謳歌すれば良いのだと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました!