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リーダーシップとマネジメントの違いとは?【組織マネジメントの重要性】

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このブログでは、主なテーマを『組織マネジメント』と『リーダーシップ』と位置づけ、論じていきたいと考えています。

しかし、なぜ組織マネジメントの技術が必要なのか、よく考えてみると私自身うまく説明(あるいは表現)したことが無かったことに気がつきました。
また世間一般的にも、リーダーシップと比べると、組織マネジメントの技術は軽んじて見られる傾向があるような気がしています。

今回はなぜ組織マネジメントが重要なのか、リーダーシップとの違いは何なのか、この2点について考えていきたいと思います。

 
[目次]

 

 

 

1 . リーダーシップとマネジメントの違い

この違いについては、既に様々な書籍やサイトでも見ることができます。

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腑に落ちるものもあれば、そうでないものもあり、絶対的な解を提示するのはなかなか難しいですね。これらを踏まえた上で、ここでは私の見解をまとめさせていただきます。



①「何をするのか」の違い

リーダーは、将来の進むべき目標を提示し、皆んなにそれを呼びかけます。
マネジャーは、その目標にたどり着くまでの具体的な方法を設計し、管理します。

そこでよく例え話に出されるのが、山登りです。

【リーダー】
「あの山に登ろう!そうすれば、こんな良い景色が見られるぞ!」
このように目標を提示し、それを達成する事にどのような意義があるのか、動機付けと啓発を行い、組織の心を一つにします。

【マネジャー】
その山に登るためには、人は何人必要か、どのような人か、どのようなトレーニングが必要か、どのような道具が必要か、手続きは何をしなくてはいけないか、タイムスケジュールはどうするか、お金はいくらかかるのかetc...目標達成のための具体的な手段を考え、設計、管理するのがマネジャーだと言えます。




②「影響の与え方」の違い

リーダーシップには、目標を伝え啓発するという役割がありますが、それは何も特別な機会(事業計画の発表時、プロジェクト発足時)に限りません。仕事中や会議など、日常のどんな場面においても発揮されるものです。自らがイニシアチブをとりメンバーを率先すること、これは常日頃より発揮されるリーダーシップであると言えます。

マネジャーの場合、フォーカスしているのは『仕組み』です。自らの率先によってではなく、設計された仕組みが実行されることによって、メンバーに様々な影響(目標達成のための)を与えます。



③「与える影響の範囲と期間」の違い

【リーダーシップ】
日常業務におけるリーダーシップの場合、基本的には自分の目の届く所、手の届く所まで、ということになるでしょう。期間は自らがそこにいる間ということになります。

【組織マネジメント】
計算し設計された仕組みは、自分のいない時間においても運用され、その効力が発揮されます。また有効な仕組みであれば、他部署や支店など、自分のいない他の組織に流用することも可能です。自分がいなくなった後も、その仕組みが用いられる限り、効力を発揮します。


ここまでをまとめると、リーダーシップは自らの行いに、組織マネジメントは仕組みに依存していると言えます。

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2 . よくある間違い

① リーダーシップとマネジメントは対の関係ではない

ここまで『リーダーシップ』と『マネジメント』を対にして考えてきましたが、実際には「リーダーシップすら組織マネジメントの一部ではないか」というのが私の考えです。セルフマネジメントの一環として、リーダーシップはコントロール出来るものだからです。

目標を提示するという機能については、リーダーシップというよりは課題の特定能力がものを言うわけで、必ずしもリーダーシップとイコールとは思えません。

図にするとこうなります。

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②「マネジメント=管理」ではない

マネジメントについて論じる時、それを端的に表す言葉として「管理」という言葉が使われます。これは間違いではないのですが、適切な一言とは言えません。
既に与えられた環境(仕組み)において、それを運用することについては「管理」と言えますが、それ以上に重要なのが、仕組みの「設計」です。

設計がおろそかな状態で、いくら一生懸命に管理をしていてもそれでは燃費も悪く、効果的なパフォーマンスはあげられません。
いかに優れた仕組みを「設計」出来るか、これが組織マネジメントの肝になってきます。

目標達成(あるいは課題解決)のための優れた仕組みを「設計」し、それを厳格に運用することが、組織マネジメントであると言えます。


3 . なぜ組織マネジメントが重要なのか

ここまで『リーダーシップ』と『組織マネジメント』について考えを綴ってきました。じっくりと読んで下さった方々は、もう組織マネジメントの重要性にお気づきだと思います。

① リーダーシップの限界

リーダーシップは重要です。しかし、リーダーシップのみに頼った手法では必ず限界がきます。

最も分かりやすいのが率いる規模の限界です。
10人弱のチームなら、自らのリーダーシップで、気合いでなんとかなるでしょう。
しかし、ある一定の規模以上になると気合いではどうにもなりません。それだけではチームを率いることも、狙らった成果を上げることも難しくなります。
それ以上を目指すなら、個人のリーダーシップを超越した、組織の枠組みや営みを設計する技術が必要なのです。

もう1つ多いのが理想論で終わってしまうというパターンです。
どんなに素晴らしい目標を掲げても、それを実現するための具体的な手段を有していなければ、実現されません。その人はただの理想論者、口だけの人ということになります。


② 組織マネジメントの悲劇

組織マネジメントの重要性に気づいている人は、意外にも少ないのが現実です。周りから評価されることも中々ないかもしれません。それはなぜでしょうか。

リーダーシップは評価が簡単です。自らの行動で率いるわけですから、周りの人が見て「あの人スゴイ!」とすぐに分かります。
一方、組織マネジメントは組織の仕組みにフォーカスした技術のため、自らが前に出るリーダーシップと比べて、分かりにくいのです。現在の状況が偶然なのか、マネジメント技術を用いて意図されたものなのか、他者からは分からないのです。

重要だけれど伝わりにくい、組織マネジメントの悲劇です。



③ 実例 〜会議の設計編〜

最後に、組織マネジメントの力を感じる実例を2つ紹介します。
きっと皆さんにも身近なケースだと思います。

例1)ミスミの場合『ザ・会社改造340人からグローバル1万人企業へ/三枝匡著』より引用

SPパーツでの改善会議は、天井が高い大きな食堂の片隅で行なっていたのですが、あるとき三枝社長から「改善ミーティングはもっと狭い部屋でやったほうがいい。ぎゅうぎゅう詰めでいい。そのほうが熱気が出るぞ。」と言われました。
実行してみたら、いままで冷めていた現場の人たちが熱く改善を語り出し、喧嘩まで始まる始末でした。《場の理論》というのがあるらしいです。
ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

 

 

例2)筆者の施設の場合

かつて、参加者10人で行なっている会議がありました。その会議で私はある問題を感じていました。

・黙っている人が多い。
・議論が進展せず意思決定に結びつかない。

そこで会議の参加者を厳選し、5人規模の会議に改変しました。
すると回を重ねるごとに、参加者の発言がみるみる増え、会議は活性化しました。また、意思決定のスピードも上がり、成果の見える会議に変わりました。
これは《傍観者効果》*1に着目した改変です。

 
どちらも、マネジメントによって会議の変革を促した実例です。
前者は会議の場所、後者は参加人数に着目しています。

「何この程度のことを」と思われるかもしれません。しかし、目標達成や問題解決のために、組織の営みの細部にまで意図を宿らすことが出来るのが、組織マネジメントの妙と言えるでしょう。