Sow The Seeds

介護の現場から リーダーのためのブログ

スウェーデンで働く日本人介護士さんに、本場の老人ホーム事情を伺った【ユニットケア】

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これまで、書籍「スウェーデンの老人ホーム/岡田耕一著」の紹介や、三回に渡って「日本のユニットケアはどうなっていくべきなのか?」という持論を掲載させて頂きました。

過去記事リンク▼

スウェーデンの老人ホームとの比較から、日本型ユニットケアの問題点を考える【書籍紹介】

日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(1 / 3)

日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(2 / 3)

日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(3 / 3)


これらの記事がきっかけで現役介護職の方々から沢山の反響の声を頂きました。本当にありがとうございます。

実はこの度、そうした反響を頂く中でスウェーデン在住の日本人介護士の方とコンタクトを取ることが叶いまして、私、大変興奮しております。

日本の特養での経験を持ち、現在はスウェーデンの老人ホームで働いているAさん。

今回、Aさんにスウェーデンの老人ホームの実態を色々と伺いましたので、そのインタビュー内容をご紹介させて頂きます。

※Aさんの個人情報、詳しい経歴等は伏せさせて頂きます。また、この記事についてAさんの情報についてお問い合わせを頂いてもお答えしかねますのでご了承下さい。
※今インタビューで得られたスウェーデンの情報は、Aさんの経験・知識・リサーチ等に基づくものですが、スウェーデンの一般論ではなく、ひとつの事例として受け取って頂ければ幸いです。

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(3 / 3)一部訂正、再投稿

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか、最終回です。

前回の記事では、隣り合う2ユニットが合体したものを中規模ユニットと定義づけ、人員配置や職員の動きについての考え方、ハード面のあり方、食事の場面、その他留意点などをつらつらと書き綴っていきました。

今回は、中規模ユニットケアの運営方法の続きとして、必要な職員人数や勤務形態などについてシミュレーションしていきたいと思います。

※目次『3交代勤務 その2』の表にある計算が間違っていた為、訂正し再投稿させて頂きます。誤った情報を掲載し申し訳ございませんでした。

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『介護の生産性』に対する強い懸念、怒れる介護福祉士の主張

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こんにちはyuです。

最近はユニットケアに関することを連載のように書いていたのですが、ちょっと中休みで、今回は違うことを書かさせていただきます。どうしても気持ちを吐き出したかったので、すみません。

先日職場にある平成31年1月1日
付のシルバー新報(いわゆる業界紙)を見ていたところ、以下のような内容が掲載されていました。

タイトル
『どうする?介護の生産性向上』避けられない効率化 人員削減と表裏一体

 人口減少による深刻な労働力不足に立ち向かうため、政府が外国人労働者の活用以前に性急に取り組むべきとしているのが、「生産性の向上(革命)」だ。安倍首相自らアベノミクス最大の勝負事項と位置付けている。

 厚生労働省は2018年5月、政府の経済財政諮問会議で2040年の社会保障のマンパワーシミュレーションを示した。そこでは医療や介護を必要としない高齢者が増えれば就業者数は見込みより81万人減、さらに労働の生産性が5%上がることによっても53万人程度減らせるとしている。ICTなどを活用することで平均では3対1の人員基準を下回る2.7対1の配置で運営できている特養があることを前提とした。

以下省略

※平均では3対1との表現がありますがこれは記事の間違いです。実際には平均で2対1であり、経済財政諮問会議資料にもそのように記載されています。


これを見て皆さんはどう思われるでしょうか?


この話の発端は平成30年5月21日に行われた平成30年第6回経済財政諮問会議です。また、その後7月26日に開催された第74回社会保障審議会 介護保険部会 でもこの事については資料に出てきます。

随分と前のことにも関わらず、私は介護業界の今後に関わる懸念事項に対し無頓着であったことを強く後悔しました。本当に情けない。

今回は、ここで語られている『介護の生産性』と、その中身について色々言いたいことがあるので綴りたいと思います。

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(2 / 3)

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか、第二回です。

前回は制度面において

  1. ユニット型施設はこれ以上増やさない方が良いのでは?
  2. ユニットケアの現場運営について、従来型の手法を取り入れた中規模ユニットを目指した方が良いのでは?

という2つの提案をさせて頂きました。
www.sow-the-seeds.com


今回は、この2つ目の提案『従来型の手法を取り入れた中規模ユニット』の具体的な運営方法について綴っていきます。

思いつく事を順不同で語っていきますので、ややまとまりのない文章となっていますがどうかお許し下さい。

※今回のブログの内容は、実際に従来型施設、ユニット型施設で働いている人でないと理解できない内容を多く含みます。そのため、それらの施設経験のない方には分かりにくい部分もあるかと思いますが何卒ご了承くだい。

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(1 / 3)

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先日の記事では、以下の書籍を参照し、日本のユニットケアとスウェーデンのユニットケアの違いを紹介しました。

スウェーデンの老人ホーム―日本型ユニットケアへの警鐘

スウェーデンの老人ホーム―日本型ユニットケアへの警鐘

 

また、その中でスウェーデン以下の人員配置でスウェーデン以上のサービスを提供しているのが日本型ユニットケアの実態であり、それは問題ではないか?必要な人員を充分に配置できない日本の状況において、教科書で教わるような理想のユニットケアは出来ないのではないか?」という旨をお伝えさせて頂きました。

とはいえ、今でも日本ではユニット型施設が多数存在し、そこで暮らす利用者、働く職員がいるわけで、その中でどうすれば皆が幸せ(利用者の生活面・職員の労働環境面)になれるのかということも考えて行かなければなりません。

今回は表題にもありますように、日本のユニットケアは今後どのようにしていったら良いのか?という点について、三回に分けて持論を綴っていこうと思います。

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【人材育成】WhyとHowを意識しない介護現場は崩壊する

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こんにちはyuです。

今回は人材育成にまつわるお話しを少し。

いきなりですが以下の事例を見て皆さんはどう思われますか? 

  • トイレのドアを開けたまま、女性車椅子利用者のトイレ介助を行い、便座に座った利用者から職員さんが離れて、チラチラ様子を見ながら他の作業を始めた。

  • 尿意はあるが、紙おむつをつけている利用者が「おしっこ出た」と訴えても「時間じゃないから…」と交換してくれない

  • 食事の際、ごはんに薬を混ぜている。

出典:『身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた 介護相談員の活用に関する調査研究事業 報告書』特定非営利活動法人 地域ケア政策ネットワーク 介護相談・地域づくり連絡会平成 29(2017)年 3 月


虐待?不適切なケア?

介護の世界には、明らかに虐待と言われるような内容のこともあれば、虐待ではないけど不適切だよね(虐待の芽・グレーゾーン)と言われるような内容のこともあります。

虐待や不適切ケアが起こる背景は様々ありますが、多くの場合『いきなり起こる』ものではなく、その兆候は『日頃のケアの中から徐々に現れている』ことが殆どです。

こうした事態が悪化しない為に必要な視点として、WhyとHowを意識することが大切ですよ、というお話しを今回はさせて頂きます。

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あなたの施設は大丈夫?介護施設の決算書を見てみよう【貸借対照表を解説する】

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先日、福岡県にある介護施設の経営難がニュースになっていました。

 福岡県行橋市流末(りゅうまつ)の社会福祉法人「友愛会」が運営する特別養護老人ホームなど2施設で、複数の職員退職や、水道代の支払い遅延など運営に行き詰まったことが3日、分かった。市は同日、施設への水道供給を停止。計約30人の入所者の安全を図るため、市内の別の施設に近く移送する異例の対応を取る。法人には年内に、社会福祉法に基づく改善命令を出す方針。

中略

 関係者の話では、法人は、利用者を行橋市居住者に限定したことなどから経営が徐々に悪化。10月には、法人の事実上のオーナーの元行橋市議が急死したことも、運営に影響を与えた。数十人いた介護職員らのうち複数が給料支払いの遅れなどで退職しており、現在、数人の職員で入所者の世話をしているという。

法人は10、11月分の2カ月分の水道代約40万円を延滞。市は11月30日までに支払いがない場合は供給を止めると通告していたが、支払いはなかった。これまでにも長期にわたる延滞があり、市は特別監査を行い、再三、改善勧告を出し、指導していたという。市は入所者の移送と同時に立ち入り調査し、経営状態を詳しく調べる。

出典:2018/12/04付 西日本新聞朝刊

介護施設というと、一般的には「少子高齢社会だし、建てれば儲かる」と思われそうですがそうとも限らず、倒産するケースも普通にあります。

例えば、地域によっては想定していたよりも利用者が少なく(あるいは事業所が乱立していて)利用者が集まらない、職員が集まらないためフル稼働出来ず初期投資を回収できない、介護報酬改定による事業の難しさなど、そこには様々な理由が挙げられます。


介護事業と言えど安泰ではない昨今、事業所の運営状況はそこで働く職員にとっても他人事ではいられません。

いち介護士と言えど、事業所の財政状況をたまには把握してみるのも良いと思います。

今回は、ニュースにもなった社会福祉法人「友愛会」の財務諸表を参照しながら、財務諸表の見方と、その内容を解説していきます。

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