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介護の現場から リーダーのためのブログ

【東レのデータ改ざん報道を受けて】根本的な原因は〇〇である

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28日に発表された、東レハイブリッドコード(愛知県西尾市)が製品検査データを改ざんしていたと言う件について。

改ざんはあったものの、安全面ではかなり余裕を持った品質基準を設けており、基準を満たしていなかったからと言って、すぐに安全性が脅かされるようなことにはならないと言うことです。

この件に対して、いくら「改ざんはけしからん!」「今頃発表なんてけしからん!」「安全に問題がないからと言って許されるのか!」と責めたところで、このような問題は絶対になくなりません。


なぜこのような事が起こってしまうのか。


根本的な原因はもっと違うところにあります。

似たような事はどこの会社でも、私が所属する介護業界でも(実地指導に通るためだけの、実質意味のない書類とか)、至るところで見られています。

今回は、こうした事が起こってしまう原因を考えてみたいと思います。

 

[目次]

 

 

1 . 出来ない約束をしてしまう

根本的な原因は、出来ない約束をしてしまう事です。

こちらのサイトに分かりやすい解説がありました

完成品メーカーが品質水準50%でもいいところを、安心のために100%で部品メーカーに発注する。部品メーカーは余裕を持って200%の水準を素材メーカーに求める。素材メーカーは195%以上なら問題なしとして納品する――。

www.nikkei.com

 

結局、実力相応のレベルでやっていれば十分良かったものの、自らに高いハードルを課して、それが守れなくて謝罪に至るという(品質は十分良かったとしても!)…

問題はこの「自らに守れない約束を課してしまう」という所にあります。そして、組織ではこのような出来ない約束は少しずつエスカレートしていきます。



2 . 例えば、社内で回覧される書類

「金銭に関する書類だからあの人もあの人もチェックするべきだ!」と捺印欄が増えていき、結局手間だけ増えて、チェックのための捺印ではなく、捺印のための捺印になる。

書類の内容なんてろくに精査していない。

本来は「私もしっかりチェックしましたよ」という責任が伴うはずの捺印なのに、実態はその捺印に何の責任も負っていないわけです。



3 . 例えば、薬の確認・循環器浴槽の塩素の確認

介護施設の事例を紹介します。

1人でチェックしていて、チェック漏れやミスが発生すると2人でダブルチェックをしましょうという話が出ます。ダブルで駄目ならトリプルでと…どんどんチェックする人が増えていきます。

2人でチェックするから手間が倍になって、さらにチェック漏れが発生します。

後から慌てて印鑑だけ押して「チェックしてましたよ」ということにしておくという事が起こります。



4 . 例えば入居者の移乗介助

こちらも介護施設の事例です。

以前、スネに原因不明の傷を負ってしまった利用者がいました。おそらく移乗介助の時に車椅子にぶつかってしまったのではないかと思われます。

ある役職者が「この方は2人で移乗介助するようにしましょう」と言いました。

役職者の言ったことに異を唱えられない部下たち…

しかしその利用者は決して体重が重いわけでも、介助が難しいわけでもありません。

この方に対して2人介助じゃなきゃ安全に介助できないなんて、じゃあ他の利用者にはどうするの?ごく普通の介護技術で対応できる範囲だと思うのだけれど…

このままだと、この利用者には(表面上の約束は)2人介助を行うことになります。実際には1人で介助することになるでしょう。

またケガがあった時に「なんで2人で介助しなかったんだ!」と上司が責めます。

冒頭の東レの改ざんと同じ事態が起こることになるのです。



5 . 出来ないことは「できない」と言う勇気

出来ない事・やっても意味のない事を見極めると言うことは、実はとても大切な視点です。

そして、それを口に出して言う勇気も大切です。

みんな「やらないよりは、やった方が良いだろうから」「口答えしづらいから」と、なかなか本音を言い出せないのです。結果、どんどん自分たちの首を絞める方向にエスカレートしていきます。

やれもしない、やっても意味のない仕事を増やして、結果自分たちの首を絞めるなんて、本当は愚かなことなのに…



6 . 上司の心得

役職者は、本人にその気がなくても部下に無言の圧力を与えています。

何か問題が起こって改善策を検討をしている時に、部下は「出来ない・やる意味がない」とは言えず、「今後は〜のように対応します」と出来ない事をその場しのぎに言う時があります。

私の場合、無茶だなと思った時には「本当にそれ出来るの?出来ない約束なら無理してしない方がいいんだよ」とブレーキをかける事があります。

すると部下は意外そうな、でもホッとした表情をしてようやく本音を語り出してくれます。そこから本当の意味での改善案の検討になります。


今回の東レの件にしろ、過去にあった東芝のチャレンジ問題(外部リンク)にしろ、出来ない約束が改ざんや不正にまでエスカレートし、余計に自分たちの信頼を落としてしまう結果になっています。

組織は「出来ない約束で無駄な仕事を増やしたり、自分たちの首を絞めたりしていく生き物」であることを、ちょっと意識しておくだけでも、今回の報道は良い学びになるのではないでしょうか。