Sow The Seeds

介護の現場から リーダーのためのブログ

介護現場を数字でマネジメントしてみよう【入浴介助の適正人数の計算】

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こんにちは、yuです。

ここのところ公私ともに慌ただしくしておりまして、久しぶりの更新となってしまいました。すみません!

以前、介護現場を数字でマネジメントする方法として、勤務の組み方にまつわる記事を書きました ▼

www.sow-the-seeds.com


私が、しつこく数字を用いて現場をマネジメントする理由は以下の3つです。

  1. 現状の把握、今後の見通しが明確になる
  2. 上司、部下とのコミュニケーションが円滑になる。納得感が違う。
  3. 現場の安定=サービスの質だから


今回は従来型施設における集団浴ついて「何人の利用者を、何人の職員で、どのくらいの時間をかけて回すのか」という事を、数字でマネジメントしていきたいと思います。

[目次]

 

 

1 . はじめに

入浴介助をどのくらいの職員数で、どのくらいのご利用者を入れるのか…ネットを検索してみると、けっこう質問系サイトに上がっています。

以下抜粋 ▼

1日何人お風呂に入れていますか?

特養で週5日、非常勤(パート)で勤務しているものです。
5日のうち3日は入浴介助に携っています。
素朴な疑問なのですが、皆さんのところは1日に何人くらいの方を、入浴させていますか?

うちは、午前中は特浴(寝て入るラインバス2機)で15~18人。
午後は10人以下の特浴と、一般浴で20人以下くらいでしょうか。
それぞれ中介助2人、外介助・誘導が合わせて3~4人で行っています。
午前中、特浴で18人入れると、もうぐったりでかなり体力的にきついです。
私は今の施設しか、経験が無いので分からないのですが
どこも、これくらい入れるものなのでしょうか?

1日何人お風呂に入れていますか? - BIGLOBEなんでも相談室

私は老健認知専門のフロアに勤務しています。

現状は入浴介助職員3人〜4人に対して約20人は入れなければなりません。ショートの方が居れば増えます…
それでも午前中9時〜12時はかかります。下手すれば午後も…
特浴が別フロアにあるため職員1人で特浴を入れに行ったりします。
非常に厳しいです。

また祝日や振替休日になるとその日の入浴予定者を割り振る為にかなりの人数の入浴介助をします。

でも1時間ではとてもじゃないけど無理です…

どのように入浴されてるのか逆に知りたいです。

皆さんに聞きます(入浴について)|介護職・介護士・ヘルパーの悩み相談・質問掲示板|けあとも

 
これらの質問に対する回答を見ると、いずれも自施設の例を皆さん紹介されており、あくまで参考程度といったものになっています。

もう少し、どんな施設でも広く当てはまる公式や基準みたいなものが見いだせれば良いのですが…

手前味噌ですが、ちゃんと計算方法がありますので、次章から説明していきます。



2 . 利用者一人30分が基本

まず、今回前提としている集団浴ですが、要は銭湯みたいな大浴場をイメージしていただければ分かり易いかと思います。

大きな浴槽があって、歩いて湯船に入れる人(一般浴)、お風呂用車椅子で入れる人(リフト浴)、複数名が皆んなでお風呂に入ります。

職員は脱衣所で着脱整容介助を担当する人(外介助)、浴室内で洗身介助を担当する人(中介助)がいる。

そんなイメージです。



さてここで、一般家庭のような個浴にいったん話を移します。

ユニットケア施設で働いている人は分かると思いますが、ご利用者一人が『脱衣所に到着→服を脱ぐ→風呂に入る→上がって服を着る→ドライヤーや爪切り等の整容』この一連の流れですが、概ね30分程度かかっていると思います。

個浴の場合、一連の流れを一人の職員がマンツーマンで対応します。

効率が良いと20分くらいでも出来ますが、ゆったり入浴してもらう事を考えるとあまり急かす事も出来ず、目安としては30分弱が妥当なところではないでしょうか。

このあと計算していく集団浴においても、この「ご利用者一人につき30分」を基準に考えていきます。

基本となる式 ▼
「職員1人:利用者1名:30分」



3 . 実際に計算してみる

私の所属する施設では、いつも外介助2人、中介助2人、合計4人を最低でも配置するようにしています。多い時だともう1人配置できる時もあります。
※以前職員不足が深刻だった時は、外中合わせて3人しか配置できない時期もありました。その時は夜勤明け職員が入浴介助に手伝いに入るため体力的にも辛かった…

① 職員4人で行う場合の適正人数

では、職員が4人配置できる時、入浴されるご利用者の数は何人くらいが適正な範囲なのかを考えてみます。

うちの施設ですと…

  • 午前は9:30〜11:30の2時間稼働
  • 午後は14:00〜15:30の1.5時間稼働
    ※浴室の準備片付けを除く

先ほど「職員1人:利用者1名:30分」という前提を踏まえると、職員一人あたり2時間で4名、1.5時間で3名のご利用者が入浴可能ということになります。

なので…

  • 午前は「利用者4名×職員4人=16人
  • 午後は「利用者3名×職員4人=12人

これが入浴可能人数の目安キャパシティになります。

マンツーマン対応より中外介助分担して行った方が効率は良くなるので、実際にはもう少し多くても大丈夫ですが、余裕を持った計算にしておきます。


② 職員3人で行う場合の適正人数

職員が3人しか配置できない場合、同じように計算してみると…

  • 午前は「利用者4名×職員3人=12
  • 午後は「利用者3名×職員3人=9

これが入浴可能人数の目安キャパシティになります。


③ 補足

個浴では終始マンツーマン対応、集団浴では外介助者と中介助者が分担して対応、全く状況が違うように見えるので、この計算の仕方が不思議に感じるかもしれませんが、実は利用者一人あたりの入浴時間とそれにかかる労働力はどちらも変わらないのです。

ですので、このような計算の仕方で大体の目安は分かります。

実際には、ここで出した計算を元に、ご利用者の自立度(一般浴、リフト浴の割合)や浴室・脱衣所の広さや座席数、動線など、施設ごとの環境によっていくらか上下します。

計算+実際の状況を加味して、最適な範囲を見極めていきます。



4 . なぜ適正な範囲の見極めを行うのか

このように計算すると感覚にのみ頼った判断や混乱、不満を避けることが出来ます。

同じ状況にあっても、職員によって「私はこのくらいは大丈夫」「私はこんな状況無理、おかしい」と判断が違ったりもします。ある程度皆んなで共有できる基準が必要です。


例えば上の計算から考えると『午前中に20名の方が入浴しなくてはいけない。職員は2〜3人しか配置できない』という状況があったとすると、それは無茶振りでしかないですし、そういう状況を無自覚に作ってしまっている責任者どうなのよ?って話なのです。

やらされる職員も大変ですし、慌ただしい中イモ洗いされるご利用者も迷惑です。


うちの施設ではこの計算を元に人員配置を行います。場合によってはご利用者に入浴の曜日を変更させて頂くお願いをする事もあります。
※基本的に「月曜午前は〇〇フロア女性、火曜午前は△△フロア女性〜」と決まっているのですが、入居者の入れ替わりに伴って、明らかに特定の曜日がキャパオーバーになった時には、一部の方に他曜日への変更を相談することがある。


今回はここまでです。少しでも安定した介護現場の一助となれれば幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!