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介護の現場から リーダーのためのブログ

熱心な介護と支配欲は紙一重【介護】【人間関係】

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とても共感できるツイートがあったのでご紹介。

[目次]

 

 

 

1 . 無意識に支配したがる人たち

介護施設で仕事をしていると、支配的な介護をしている場面を見かける事があります。

介護の場合、意識しておかなくてはいけないのが、相手は「病気である」という事と「相手は他人であり、人生の先輩であり、お客様である」という事。


これが時折、自分の子供の躾をするがごとく、上から目線で支配的に振る舞う人が現れます。

そういう人に限って「自分はこんなに利用者のことを考えている」「自分はこんなに一生懸命やっている」「〇〇さんにこういう生活をしてほしい」と、自分よがりの正義感を語ったりします。



2 . 介護職の専門性

介護職の専門性って何かと考えた時に、「疾患について」や「リハビリについて」など、ついつい身体的知識、医療看護的な考え方に走ってしまう人が多い(結果がわかり易いから)のですが、それだけではちょっとズレていると思います。

① ケーススタディ

例えばこんな場面 ▼f:id:sts-of:20170708225407j:plain

転倒しやすい認知症の方が、自分で立ち上がって何処かに行こうとしています。

遠くから「立たないで!」と叫んだのは「転んだら大変だから」という思いからでしょう。しかしこの対応、介護職の専門性という意味で言うとツッコミどころ満載です。

  • 認知症の方であり、あらかじめ転びやすい事を理解して頂き、立たない事を強制するは無理。説明しても忘れる。

  • ずっと座っていればお尻が痛い、トイレに行きたい等、立ちたくなるのは普通の心理。

  • 後ろから「立たないで!」と叫ばれたら、驚いてかえって転倒するリスクが高まる。

  • 行動を抑制したり、説教したりすると、精神的な辛さやイライラから、この後この利用者はもっと落ち着かなくなる可能性がある。

  • お年寄りの立場からしたら、立った事を怒られても「はっ?何で怒られなきゃいけないの?」という感じ。

 

ではどうすれば良かったのかと言うと、それとなく側に行って「こんにちは」と笑顔で挨拶すれば良いのです。私の場合、だいたい以下の2パターン。

  1. 「こんにちは。何処か行きますか?」
    利用者「いやートイレは何処かな?」
    ➡︎トイレ介助の対応をする

  2. 「こんにちは、何処か行きますか?」
    利用者「いやー何となく」
    「あちらで皆さんとテレビでも見ますか?」
    ➡︎それとなく座って頂けるようにもっていく。時間があれば少し一緒に歩きながらお話する。などなど…

立つこと自体は何も悪いことではありませんから、その方が悪い事をしたと感じさせないように、自然の流れのように、留意しています。

行動を強制する場合と比べても、特段時間はかかりません。


② 疾患、心理、立場を理解した上で

老人ホームは、文字どおりホーム(家)です。生活そのものを支える仕事です。

その方の疾患、心理、立場を理解した上で、なるべく安全に、なるべく心身共に自由気ままに、心穏やかに生活してもらえるよう、技を駆使出来るのが介護職の専門性なのだと思います。



3 . 自分を主語にしてはいけない

 支配、躾、説教的な対応の共通点は「自分の思い通りに、相手を何とかしたい」という、自分が主語になった考え方である、という事です。

自分が「こう!」って思うところが先にあって、相手をそれに当てはめて行こうとする。

良い介護はその逆で、まず相手がどうなのかを見て、自分はそれに合わせていかようにも変化します。変な言い方かもしれませんが、そもそもの「自分」なんてないのです。

よく言われる「利用者本位」ってそういう事。


介護に限らず、人間関係の多くは「自分の思い通りに、相手を何とかしたい」が原因となってうまくいかない事が多いような・・・



4 . さいごに

誤解を生まないために、最後にちょっと補足しておきます。

ケースにあげた「立たないで!」と叫んだ介護士さんの話、ちょっと理解できる所もあります。

昨今、介護職に対する世間の目は厳しくなってきており、事故が起こると訴訟に発展するケースもあります。それゆえに、安全に対しては現場の介護士さん達もかなり神経をすり減らしています。

私の考えですが、私はベストを尽くしている以上、訴訟を起こされても怖くありませんし、堂々としていれば良いと思っています。自分のしたことの事実を見極め、公正にジャッジして頂けるのなら。

部下の場合も同様で、ベストを尽くしている限り、最大限守りますし何も怖がる必要はないと思っています。