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組織マネジメントにおける『車の両輪』とは何か 【ビジョナリーカンパニー】

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『車の両輪』
2つのうち、どちらを欠いても役に立たないほど密接な関係にあることの例えとして、よく使われる言葉です。*1

  • 経営と現場
  • 営業と開発
  • 速さと丁寧さ
  • 勉強と実践
    ・・・etc

様々な場面で使われる言葉ですが、皆さんは何をはじめに思い浮かべるでしょうか?

今回は「マネジメント層が絶対に意識しておくべき『車の両輪』とは何なのか」というお話です。

 [目次]

 


1 . はじめに

本題に入る前に、少し余談から失礼します。

車の両輪と聞くと、左右のタイヤの事なのか、前後のタイヤの事なのか、皆さんはどちらを想像しますか?

左右?f:id:sts-of:20170706231823p:plain

前後?f:id:sts-of:20170707230949p:plain

ちなみに私は前後派です。


左右の車輪は、どちらかが欠けてしまったら一気に破綻するイメージ。また、どちらかが頑張り過ぎてもダメで、均等に回さないといけないイメージがします。

前後の車輪は、どちらかが頑張ればそれが推進力となり、もう片方が惰性でも前に進むイメージ。どちらかが勢いを増せば全体としての推進力も増すイメージ。両方頑張れば、なお勢いを増すイメージ。

多くの組織って、後者のようなイメージで日々進んでいる気がしていて、私にとっては前後の車輪のイメージがしっくりきます。

さて、何でこんな前置きをしたかと言うと、この後お話しする本題『車の両輪2つの視点』が、正にこの前後の車輪の関係にあるからです。

このことを踏まえた上で、それでは本題に入ります。



2 .『実直な毎日』と『改善』

私がマネジメント業務に携わるようになって、最も大切にしている視点が『実直な毎日』『改善』です。この二つこそ車の両輪であると考えています。



2-1 . 実直な毎日

多くの仕事は、ある程度決められた仕組みの中で、ルーティンワークで回っています。

規律を守り、日々の業務に実直に当たること。そして、現状の質を維持継続していく事が大切です。

この維持継続が中々難しい部分です。意識しなければ、様々な原因によって緩やかに下降していきます。以下に、注意しておきたい衰退の原因について書き出します。


① ルールの形骸化

当初決められたルール(マニュアル、仕組み)も、時間の経過と共に古くなり、現状にマッチしない状況が生まれます。

マニュアルは運用されなくなり、徐々に現場は職員の感覚と経験に頼った無法地帯に陥ります。

少しずつ必要なルールさえも風化していき、より楽な方、簡単な方に流されていく事があるので注意が必要です。


② 職員の堕落

私は基本的には性善説によって人材育成を行うべきだと考えています。

現場職員の仕事に関心を示し、働きやすい環境作りを支え、職員の成長に寄与する取り組みを行い、頑張りに対して正しい評価をする事が出来れば、ある程度は職員自らのモチベーションによって、より高いパフォーマンスを発揮してくれます。

しかしこれらは、継続して行っていかなくてはなりません。上司が現場に対する関心をなくしたら、働きやすい環境作りをしなかったら、正しい評価をしなかったら、時には厳しい目を向けなかったら、職員は堕落していきます。

『良い仕事』にフォーカスした指導と評価、目配りを怠らないようにしたいものです。


③ 物やシステムの老朽化

普通に生活をしていても思う事ですが、例えば自宅をキレイな状態に保つと言う事ですら、それなりのエネルギーを要します。

  • 埃が溜まったら(あるいは溜まる前に)掃除をする。壊れたものを修理する、交換する。ゴミを出す。
  • 清掃用品や収納用品を適時揃える。
  • 使いやすいように動線を整え、それを維持する。
  • 定期的に大掃除する。


自宅を例えに出しましたが、会社においてもこうした環境維持のための取り組みは必須です。ただ何となく過ごしていただけでは、徐々に塵が溜まっていき、組織は衰退していきます。


④ 職員の入れ替わりと人材育成

職員の入退職や異動などによって、今までのルールを覚えていた人が減っていきます。

注意深く観察していないと、前述したのと同様にルールの形骸化・風化が起こります。

また、マネジャー自身も入れ替わりの対象になりうる人材です。様々なルールや押さえておくべき勘所を書面に起こし(マニュアルの整備)、属人的でない仕組みを運用できる組織づくりを日頃から意識して進めておく必要があります。

守らなければいけないルール(組織内のルール・法的なルール)、組織の拘りなどを、次の世代に注意深く伝えていく事、継承していく事をしなくてはいけません。


⑤「実直な毎日の継続」について

私自身心当たりがあるのですが、ご利用者に対してであれ、事務仕事であれ「こんなもんでいいや」「今はいいや」と、ちょっと楽しようとしてしまう時があります。

そこで「ここは頑張ろう」「サボらず今を乗り切ろう」、このちょっとひと頑張りの積み重ねがどれだけ出来るかどうかが、とても大切だと感じています。

また部下に対する評価ですが、一般的にはプラスαの事をして目立つ職員に良い評価が行きがちです。

地味にアピールもなく、実直な毎日を積み重ねている職員も必ずいます。そうした人達が正当な評価を得られるよう、気を付けていかなくてはと考えています。



2-2 . 改善

これは言わずもがな。当たり前の事だと誰もが感じていることだと思います。

完璧な状態なんてなくて、より良くなるための手段が何処かしらにあるはずです。また内外の環境変化によって、ベストと言える状態も時代によって変化します。常に「より良く」を目指し改善していくことが求められます。


しかしこれもまた難しい。

改善とは即ち『変化』です。現状で何とかなっている(何とかなった気になっている)のを、わざわざ変化を起こすと言うのは、とてもエネルギーが必要です。

人には現状維持バイアスがあり、どんなに良い事であっても変化自体にアレルギー反応を起こします。*2

また、組織の仕組みが変化すると言う事は、皆が新しいやり方を新たに学習しなければなりません。改善策の発案はもとより、定着にも労力を費やします。


① トップをはじめ、改善(変化)に意欲的な文化を

まず留意点としては、組織トップの意欲が重要になってきます。

改善に対して貪欲で、変化に対して臆さないトップである事。そうでなければ、各セクションの長〜現場職員に至るまで、改善に貪欲な組織文化は築けません。

そしてこの問題は、「職員個々の資質」と言うよりは「いかにこうした組織文化を築けるか」と言うところが肝心になってきます。

上位者自らが改善の先頭に立ち、自分たちも改善に向けて取り組んでいる姿を見せる事(大抵の場合、自分たちの既得権に切り込むのが最も効果的)。現場レベルの改善に対してもアンテナを張り、良い変化には抜け目なく評価する事が大切です。


② 改善を定着させるためには

「ここはこうした方が良い」と改善案が纏まったとします。

しかし口頭で周知しただけでは、いつか風化します。

前述した属人的でない仕組み作り(マニュアルの整備と徹底した運用)を行い、改善した内容を書面に残しておく事。残されたルールが今後も運用されるようにしておく事が必要です。その場かぎりの改善では「対処療法」で終わってしまいます。改善を定着させ積み重ねていけるようにする事が大切です。


 

3 . さいごに、書籍紹介

今回は「マネジメント層に必要な視点、車の両輪は『実直な毎日』と『改善』の積み重ねですよ」と言うお話でした。

やっている事自体は何も画期的な事ではありませんが、組織を観察する際のコツになると思います。

『実直な毎日』は、組織の衰退を防ぎ足場を固めるために。『改善』は組織の成長・向上のために。この二つの車輪を絶え間なく回し続ける事が出来たなら、それは大きな推進力となるはずです。

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最後に下記の書籍より、印象的だったところを引用して今回の話は終わりにします。

『ビジョナリーカンパニー2−飛躍の法則』(ジム・コリンズ*3著)
超一流企業に勝る業績を上げるまでに成長した、ごく普通の会社。全米1435社の中から選ばれた「傑出した業績を長期間持続させることに成功し飛躍を遂げた企業」11社を詳細に調査分析し、その共通点を見出そうとする内容です。

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

 

われわれは調査の過程でつねに、「決定打」や「奇跡の瞬間」を、転換の性格を示すものとして探し求めてきた。インタビューでは、それを明らかにするよう強く求めることすらしてきた。ところが、良好から偉大への飛躍を導いた経営幹部は、転換期を象徴する出来事や瞬間を指摘することができなかった。

「いくつかの要因に分解して因果関係を調べたり、『分かった』とか『これぞ決定打』とかの瞬間を探し出したりすることはできない。相互に関連する小さな動きを大量に積み重ねていった結果なのだから」
〜中略〜
「変化は一気に進められたわけではない。徐々に進められていったのであって、数年経ってからでないと、だれの目にも明らかだと言えるほどにはならなかった」

こうして徐々に事実がみえてきた。魔法の瞬間はなかったのだ。外部から眺めているものにとっては、一撃によって突破口を開いたようにみえるが、内部で転換を経験したものにとっては、印象がまったく違っている。
※太字は筆者にて加筆