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介護の現場から リーダーのためのブログ

全てのビジネスパーソンが知っておいた方がいい『矛盾』との付き合い方【3事例】

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「コストを削減しろ!」
「サービスの質を落とすな!」

このような矛盾に挟まれて、頭を抱えるリーダー職の方は多いでしょう。

しかし、この矛盾には「リーダーがリーダーたる」あるいは「組織が成長するための」、オイシイ種が隠れています。この矛盾との付き合い方こそ、リーダーの成否を分ける要素かもしれません。

矛盾とどう付き合うべきなのか、今回はその事について考えてみます。


[目次]

 

 

1 . 経営と現場について

  • 人出が足りないと嘆く現場からの圧力
  • もっと利益を上げるため支出を抑えるようにと経営層からの圧力

組織が存続するためには、利益を上げる必要があります。お金の観点から見た場合、少ない人数でも現場が円滑に回るのであれば、それにこした事はありません。その方がより多く、末長く従業員にお給料も払えます。

一方で、お金の観点を無視した場合。現場の人数が多ければ、その分質の高いサービスが提供出来ますし、一人当たりの仕事の負担も軽減します。

リーダーは、どちらの正しさも知っています。ここでリーダーに求められるのは、この二つの矛盾を出来るだけ高次元で融合させる事です。

では具体的にどうしたら良いのかを考えていきます。


偏りを解消する

利益率が高くても現場が疲弊している場合、経営層よりの偏りが。現場は円滑に回っていても利益が上がっていない場合、現場よりな偏りが発生している事が考えられます。

数字のことは経営層の方がよく把握しています。現場運営のことは現場リーダーの方がよく把握しています。

経営層と率直に協議し、経営と現場運営どちらも成り立つバランスを見極める、擦り合わせをする必要があります。ここの合意形成が行われる事で、その後の改善改革の方向性が明確になり、視界が開けてくるでしょう。

もっとも、東芝の例*1を見ても分かるように、ここが中々難しくて、理論的に、正直に議論する事すら叶わないと言う組織があるのもまた事実ですが…


② 改善、改革による解決

上記①の擦り合わせをした場合、納得しがたい現実を突きつけらることもあるでしょう。現場は疲弊している、けれども利益はギリギリの状態であり、これ以上の人出は増やせそうにない。

これを解決するためには

  • より大きな利益を上げる方法を模索する
  • 利益率を維持し、従業員一人あたりの負担を減らす方法を模索する


この2つの方法が考えられるでしょう。

私が所属する介護施設の場合、事業の特性上、後者の選択肢が現実的です。心の負担、体の負担、頭の負担、それぞれの視点から改善策を見出し、具体的にアプローチしていきます。

よく「イノベーション」と言いますが、そう簡単にイノベーションが起こせたら誰も苦労はしません。現実には、実直な考察と改善の積み重ねを、もっと大事にした方が良いでしょう。

一番簡単なのは「やめる事」を考える事です。長いだけの会議、本当に必要があるのか分からない書類、過剰なサービス、思い切って仕分けをしてみる事をオススメします。やめる=質の低下と考え、言い出す事には勇気がいりますが、成果に寄与しない活動は思い切って減らしてみても良いのではないでしょうか。人間慣れるもので、やめる時には多少の摩擦は避けられませんが、1年もすればやめた後の状態が「普通の状態」になります。



2 . 人材育成について

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  • どのような人であっても成長できる
  • 能力や適性のない人は辞めてもらった方が良い

「絶対に育てようがない!」とサジを投げたのに、人事異動などで環境が変わったら、上司が変わったら、自分がちょっと接し方を変えたら、今までが嘘だったように成長する人もいたりします。

その一方で、本当に不適切な人というのもいるもので、その人が組織のガンとなって周りの足を引っ張る、ネガティブなエネルギーを拡散する、若手が良い風に育たない、人が辞めていく…と言う状況もあったりします。

こうした人材育成、人間関係はいつでもリーダーの悩みの種ですね。


① 寛容性は必要

働きアリの法則(2:6:2の法則)*2にもあるように、どのような組織であっても、全員が全員優れたパフォーマンスを発揮している状態、というのは中々現実的ではないようです。

職員によって得手不得手の違いや、キャパシティの違いがあるのは当然です。ここの違いを理解し、尊重し、その人の持っている潜在力を最大限引き出すような心がけが大切です。


② 淘汰も必要

能力、適性について、不適切な人が淘汰されるための基準や決断も必要です。そうでないと真面目に一生懸命働いている人が報われないからです。

良い組織とは何かと考えた場合、それは「怠け者が快適な組織」ではなく「志ある職員が存分に力を発揮し、それが報われる組織」であるべきではないでしょうか。また、そうした組織に少しでも近づけるよう求められているのが、リーダーという役割でもあるのです。

ドライかもしれませんが、時には厳しい決断をする事も、選択肢には持っておくべきです。


③ 留意点と、判断のポイント

判断のポイントは「誠実性」「猶予があるかどうか」です。

上記①②の選択肢で、いきなり②を振るう事は早計ですし、権力の行き過ぎた行使になる可能性があります。まずは①をどこまで突き詰めていけるかを考える事が必要です。

では、①の選択が限界を感じるのはどういう時か。

  • 当該職員によるハラスメント等で、他の職員に明らかな被害が及んでいる

  • 当該職員による仕事で、お客様に明らかな被害が及んでいる

  • 当該職員が改善する意思がなく、そのネガティブなモチベーションで周りを巻き込んでいる。そして、その度合いが深刻である

  • 当該職員を養い続けていけるほど、余裕がなく(経営的な余裕。周りの職員の余裕)切迫している。


などでしょうか。要はその職員の人間性に「仕事に対する誠実さ」「人に対する誠実さ」があるかどうかと言う事と、「その職員の面倒を見れるだけの猶予」が組織にあるかどうか、と言う事です。

リーダーは常に①と②、両方のさじ加減に細心の注意を払い、舵取りをする必要があります。また、組織に服務規程が整っている場合、それを形骸化させず運用していく事が大切です。



3 . 部下との距離について

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この2つについては、どう考えるでしょうか。

  • 適度に距離をおいて接する
  • 自分の家族のように、親密に接する

 

① 距離を置く理由

過度な関わりは互いの依存関係を深めます。また、接し方が人によって偏りが生じる事で、周りの人の不公平感が募ります。

こうした弊害を避けるために、「自分は部下と食事にはいかない」と決めている人もいるくらいです。


② 親身に接する理由

一方で、仕事だけ教えていても人は育たない、と言う事もあります。

経験則ですが、特に若い職員の場合、仕事がうまくいっていない時と言うのは、プライベートに問題をきたしている場合が多いのです。生活習慣の乱れ、家族関係、友人や恋人関係、お金関係など。

このような場合、仕事そのものに関する指導よりも、プライベートも含めて親身に話を聞く、助言する、励ます、と言った関わり方の方が効果があったりします。


①と②、どちらの対応であれ「あなたを大切に思っている」と言う事と「公平公正に接する」と言う事を周りが感じ取れれば、それで良いのではないかと思います。



まとめ

人は、簡単に答えや真理を求めます。しかし1つの方法論や考え方で、全ての場合に対処できるほど、世の中単純ではありません。

相反する矛盾の中で悩み、考えるからこそ、そこに新たな答えが見出せます。矛盾こそが成長の糧になるのです。

矛盾に悩まない、あるいは矛盾を感じない、物事を画一化し過ぎている人は、考えることを止めてしまっていると言ってもいいでしょう。 

矛盾を包括的に受け入れ前に進む力が、リーダーには必要です。

 

 

*1:経営陣が「チャレンジ」と称し、普通では到底達成不可能なノルマを強要することや、会議などで上司が部下を罵倒し詰める事(詰められた部下は、更に自分の部下を詰めると言う連鎖)が常態化していた。▼参考 

東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

 

 

*2:働きアリの法則 - Wikipedia