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方針を強く打ち出すことの功罪【3つのエピソード】

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前回の記事、文字数が4000文字に迫ろうとしていたため、全てを書ききれませんでした。補足として関連する3つのエピソードを紹介します。

前回記事 ▼
方針を強く打ち出すことの功罪【5つのチェックポイント】 - Sow The Seeds

[目次]

 

 

 

1 . ある施設長の場合

以前、ある老人ホームの施設長とこんな会話になりました。

その施設長はかつて、デイサービスの責任者としてかなり尖った方針を打ち出し実践したことがありました。その取り組みは全国的にも注目され、今では業界で有名な施設になっています。


「そのように強い方針を打ち出した時、反対する人はいませんでしたか?かなり強い抵抗が予測されますが。」

施設長
「最初に半分の人が辞めましたよ。付いていけないって。」
「今は取り組みに対して周りも理解しているから(残った人、新たに入職した人)、そのようなことは無いけどね。」


この施設長はサラッと言っていましたが、実際には相当の苦難を地道に、形になるまで耐え凌ぎ、そして乗り越えたのでしょう。

ある方針を強く打ち出した時、その後に待ち受ける困難を乗り越えるだけの技量と、覚悟、粘り強さが必要なのだと考えさせられる会話でした。


2 . アップル社の場合

この記事は組織内のマネジメントについて論じてますが、お客様に提供する商品やサービスについても、同じ図式で説明することができます。

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アップル社は、いち早くフロッピーディスクや光学ドライブを排除したり、徹底したプロダクトデザインにするなど、常に尖った製品を提案し続けています。その行動はいつも刺激的で、賛否両論を巻き起こします。

しかし、アップルユーザーがアップル社の製品に抱く愛着、これを他のメーカーが実現できているかといえば答えはノーでしょう。計算しつくされた尖りが、それだけ熱狂的なファンを生み出しているのです。

また、アップル社が見事なのは『一度入ったら抜け出せなくなる』仕組みです。

iCloudやAirDropなどでアップル社製の各デバイスの連携を強めたり、一貫性のあるデザインやユーザーインターフェイス等がそれに当たります。一度アップル社の製品を使い出すと、「他も全てアップル社のものを」というようになっていくのです。


3 . 上杉鷹山の場合

上杉鷹山は、江戸時代中期の大名で米沢藩9代目藩主です。*1
彼は破綻寸前だった米沢藩を、様々な施策で復興させた名手として名高い人物です。

有名な「なせば成る、なさねば成らぬ何事も〜」は彼の言葉です。

また、故ケネディ大統領も、日本で一番尊敬する人物は?と聞かれた際、この上杉鷹山の名を挙げたそうです。

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この上杉鷹山も、かつて反対派勢力に苦しめられたことがあります。

古くからの重臣が旧態にしがみつき、改革にはどんな形でも反対したのです。鷹山は熟慮の末、この反対派を切腹に処すことにしたそうです。

賛成派も多くいました。「誰をバスに乗せるか*2、時に厳しい決断が必要なこともあるのです。

 

代表的日本人 (岩波文庫)

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ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

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さいごに

しかし世の中を見ていると、自分で責任取るのが怖いのか、右も左も決断できない人が多いように感じます。農耕民族、村社会の日本の歴史(集団主義、トラブル回避主義、リーダーシップの欠如など)を考えると仕方ないのかもしれませんが。これまでの経験を振り返ると、こうした人は強い批判こそされませんが、強く信頼されることまずもありません。

『決断できない』
組織マネジメントに限らず、政治、商品、その他社会の様々な場面において、この日本人らしい弱点が現れているような気がしてなりません。

 

 

*1:上杉治憲 - Wikipedia

*2:「ビジョナリー・カンパニー2 −飛躍の法則/ジム・コリンズ著」より引用