Sow The Seeds

介護の現場から リーダーのためのブログ

互いを理解し感謝することにも、戦略が必要

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面白い記事だったので、まずはご一読頂きたい ▼

blog.tinect.jp

さて、私が所属する介護業界では、これと同じことが現場職員〜役職者間でしばしば発生し、互いの不満を募らせています。3Kで離職が多いと言われるこの業界ですが、実は離職理由の1位は人間関係、3位は事業所への不満です。*1
※2位は結婚出産

ちなみに、東京都の介護関連の有効求人倍率は7程度、どの事業所も人手不足が深刻な問題になっており、サービスを安定して提供し続けるためには離職を防ぐ手立てが必要です(職員不足でフロアを一部閉鎖という施設もあり、投資を売り上げで回収できなくなったりします)。*2

『売り上げ急増』『事業成長』『成果に応じて高給』などの良い意味での欲をモチベーションにしづらいこの業種。互いを信頼し気持ちよく仕事が出来る環境というのは、組織をマネジメントする上で無視することのできない要素なのです。
この問題に向き合わなければ、その役職者は『真の役職者』とは言えないという事です…

 

 

1 . 上司の方々へ

① 今日、何事もなかったと思ってはいけない

介護の現場では、利用者の体調や職員の不足等で、日々目まぐるしい調整が行われています。予定通りのルーティンワークで終えれることは少ないのです。

しかし、現場の職員はそれを声高にアピールすることもありません。歯を食いしばりながら自分たちの責務を果たします。そして、何事もなかったかのように利用者の毎日の生活が営まれています。

また、命令されなくともルーティンワーク以上のサービスを自発的に考え、行ってくれている職員も多いのです。しかしそれも上司が気づいてあげられなければ評価に繋がらない…寂しいじゃないですか。

古典『孫子』には、このように書かれています。
戦争して派手に打ち勝って、皆が立派だと褒めるのは、最高に優れているとは言えない。戦いに巧みと言われる人は〔普通の人では見分けのつかない〕機会を捉えて勝つ。だから本当に戦いに巧みな人は、人目を引くような勝利はなく、名誉もなければ、武勇優れた手柄もない。※文章が長いので、筆者にて意訳

新訂 孫子 (岩波文庫)

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現場でも、このような働きをしている人がいるはずです。どうか気づいてあげたいものですね。

 

② 役職者に見られる既得権

介護の現場、特に老人ホームは24時間365日営業しています。シフト制ですから毎日規則正しく出社することも、土日祝日に家族とのんびり過ごすことも叶わない職員が大勢です。出勤日数こそ同じですが、世間の休み時こそ、現場を誰かが支えてくれています。

また、事務仕事であればある程度自分の裁量で作業のペースを調整したり、「集中できねー」とその場を離れて一呼吸置くこともできるでしょう。しかし現場では利用者は待ってくれません。どのような状況においてもその場を離れることはできず(利用者の命に関わることなので)、目の前の業務を完遂しなければいけないのです。その時のストレスは中々のものです。

現場叩き上げの役職者の方々は、どうか思い出して頂きたい。


2 . 現場職員の方々へ

① 今日、何事もなかったと思ってはいけない

サービスを直接提供している現場が『中核』とすると、それ以外のところはさながら『外堀』と言えるでしょう。

労務管理、採用関係、業務における様々な仕組み作り、苦情対応、契約、諸手続き、介護保険に関する請求、そうした一切を請け負っているのが、他職種であったり、役職者だったりします。こちらも日々突発的なことが発生し、目まぐるしい調整をしいられることもしばしばです。

出勤してきて、現場に入って、いつもの業務に入る、これは誰かが『外堀』を日々整えてくれているからできる事なのです。

 

② 現場職員に見られる既得権

老人ホームの場合、早朝や夜間など上司の目の届かない時間が多くあります。また利用者も認知症を抱えた方々が多くサービスに対する不満を十分に表明できません。即ち、監視の目も指摘の声も少ない環境で仕事をしているという事です。

飲食などの一般のサービス業では絶対やらないだろうと思われる業務態度が、介護の現場では起こったりします。

また人手不足の現状、明らかに適正のない職員であっても野放しにされているケースも多いです。利用者も、家族も、管理職の人たちも、サービスの中核は現場職員に任せるよりしょうがないのです。不適切な職員だから即現場に立たせないということも中々できません。

現場職員が、利用者を人質にとっているような状況(自分たちにそのつもりがなくても)である、ということをどうか知っておいて下さい。


3 . 処方箋

① 歩み寄るのは上司から

さて、互いの事を不満に思い意地を張り合っていても、らちがあきません。歩み寄るのは必ず上司からでしょう(かといって、部下の立場にある人も「上司からでしょ」って態度はやめて下さいね)。

上司が勇気をもって襟を開けば、部下の態度も軟化します。

 

② 戦略的に コミュニケーション量を増やす

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互いに感謝できる関係が最高ですが、そのためには、先に述べた既得権を積極的に排除する事と、互いをよく知る必要があります。ここで言うコミュニケーションとは、単に沢山話そうと言うことではありません。

情報の流通量を様々な手段で増やしましょうと言うことです。

《例》
・顔を合わせる機会を増やす
(一日一回は現場に顔を出す、動線を考える)
・互いの仕事を見える化する
(マニュアル整備と公表、会議公表)
・社内報などで各人を取材する
・定期的に他役職の仕事に体験研修をする

・率直に意見を交わす、吸い上げる機会を作る
(会議、アンケート等)
・オフィスレイアウトを工夫する
    etc...


例えばオフィスレイアウト一つ取っても、社長室をなくす、デスク配置を工夫する、フリーアドレスにするなどして、社員の交流が自然と活性化する試みをしている企業も多くあります。*3

互いが何をしていて何を考えているかを知り理解が深まるような工夫を、漠然とではなく戦略的に行っていく事が求められています。