Sow The Seeds

介護の現場から リーダーのためのブログ

「高齢者への虐待件数報道」を深読みする

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こんにちはyuです。

3月26日、厚生労働省から2017年度の高齢者への虐待件数が発表されました。

養介護施設従事者による虐待が510件、家族等養護者による虐待が17078件、報道によっては昨今の介護職員による虐待の不安を煽るような見出しをつけて報じているところもありました。

参考▼

www.yomiuri.co.jp


厚労省の発表はこちら▼
平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果


件数だけ見ると、まず驚かされるのが家庭内における虐待の多さ、また虐待に至らないまでも適切な介護を受けられず苦痛を強いられている方なども含めれば、そのインパクトは一つの社会問題、本人にとっても家族にとっても老後の大きなリスクと言えます。

今回は厚労省の資料を参照しながら、もう少しその内容を深く考えていきたいと思います。

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【ワムネットより】『平成29年度 特別養護老人ホームの経営状況について』を解説します

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こんにちは、yuです。

皆さんはWAM NET(ワムネット)というサイトをご覧になりますでしょうか。

独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉・医療・保健の総合サイトで、関係するニュースや行政の動向、様々な調査結果などが掲載されているので、私たちが情報を収集するのに役立つサイトです。※回し者じゃないですよ

先日3月1日のことですが、こちらに『平成29年度 特別養護老人ホームの経営状況について調査結果が掲載されていましたので、今回はその内容について、いくつか要点をピックアップして解説していきたいと思います。

経営層だけでなく、介護現場で働くリーダー・主任にとっても必要な情報ですので要チェックです。

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介護人材確保のために、人員配置基準の厳格化を提案したい【政策・経営】

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こんにちは、yuです。

ここのところ、どうしたら介護分野に働き手がより多く集まるのか(あるいは離れないか)、ということを悶々と考えています。

2025年問題*1に向けて、毎年6万人ペースで介護職員を増やさなくていけないと言われていますが…

結論から言います。

介護施設のサービスの質を維持したまま、介護人材を充足させたいならば、人員配置基準の厳格化をするべきである、というのが今回のお話です。

※ 2019/4/14、当記事に寄せられたご意見ご感想を追記いたしました。

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スウェーデンで働く日本人介護士さんに、本場の老人ホーム事情を伺った【ユニットケア】

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これまで、書籍「スウェーデンの老人ホーム/岡田耕一著」の紹介や、三回に渡って「日本のユニットケアはどうなっていくべきなのか?」という持論を掲載させて頂きました。

過去記事リンク▼

スウェーデンの老人ホームとの比較から、日本型ユニットケアの問題点を考える【書籍紹介】

日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(1 / 3)

日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(2 / 3)

日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(3 / 3)


これらの記事がきっかけで現役介護職の方々から沢山の反響の声を頂きました。本当にありがとうございます。

実はこの度、そうした反響を頂く中でスウェーデン在住の日本人介護士の方とコンタクトを取ることが叶いまして、私、大変興奮しております。

日本の特養での経験を持ち、現在はスウェーデンの老人ホームで働いているAさん。

今回、Aさんにスウェーデンの老人ホームの実態を色々と伺いましたので、そのインタビュー内容をご紹介させて頂きます。

※Aさんの個人情報、詳しい経歴等は伏せさせて頂きます。また、この記事についてAさんの情報についてお問い合わせを頂いてもお答えしかねますのでご了承下さい。
※今インタビューで得られたスウェーデンの情報は、Aさんの経験・知識・リサーチ等に基づくものですが、スウェーデンの一般論ではなく、ひとつの事例として受け取って頂ければ幸いです。

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(3 / 3)一部訂正、再投稿

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか、最終回です。

前回の記事では、隣り合う2ユニットが合体したものを中規模ユニットと定義づけ、人員配置や職員の動きについての考え方、ハード面のあり方、食事の場面、その他留意点などをつらつらと書き綴っていきました。

今回は、中規模ユニットケアの運営方法の続きとして、必要な職員人数や勤務形態などについてシミュレーションしていきたいと思います。

※目次『3交代勤務 その2』の表にある計算が間違っていた為、訂正し再投稿させて頂きます。誤った情報を掲載し申し訳ございませんでした。

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『介護の生産性』に対する強い懸念、怒れる介護福祉士の主張

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こんにちはyuです。

最近はユニットケアに関することを連載のように書いていたのですが、ちょっと中休みで、今回は違うことを書かさせていただきます。どうしても気持ちを吐き出したかったので、すみません。

先日職場にある平成31年1月1日
付のシルバー新報(いわゆる業界紙)を見ていたところ、以下のような内容が掲載されていました。

タイトル
『どうする?介護の生産性向上』避けられない効率化 人員削減と表裏一体

 人口減少による深刻な労働力不足に立ち向かうため、政府が外国人労働者の活用以前に性急に取り組むべきとしているのが、「生産性の向上(革命)」だ。安倍首相自らアベノミクス最大の勝負事項と位置付けている。

 厚生労働省は2018年5月、政府の経済財政諮問会議で2040年の社会保障のマンパワーシミュレーションを示した。そこでは医療や介護を必要としない高齢者が増えれば就業者数は見込みより81万人減、さらに労働の生産性が5%上がることによっても53万人程度減らせるとしている。ICTなどを活用することで平均では3対1の人員基準を下回る2.7対1の配置で運営できている特養があることを前提とした。

以下省略

※平均では3対1との表現がありますがこれは記事の間違いです。実際には平均で2対1であり、経済財政諮問会議資料にもそのように記載されています。


これを見て皆さんはどう思われるでしょうか?


この話の発端は平成30年5月21日に行われた平成30年第6回経済財政諮問会議です。また、その後7月26日に開催された第74回社会保障審議会 介護保険部会 でもこの事については資料に出てきます。

随分と前のことにも関わらず、私は介護業界の今後に関わる懸念事項に対し無頓着であったことを強く後悔しました。本当に情けない。

今回は、ここで語られている『介護の生産性』と、その中身について色々言いたいことがあるので綴りたいと思います。

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか(2 / 3)

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日本のユニットケアは今後どうなっていくべきなのか、第二回です。

前回は制度面において

  1. ユニット型施設はこれ以上増やさない方が良いのでは?
  2. ユニットケアの現場運営について、従来型の手法を取り入れた中規模ユニットを目指した方が良いのでは?

という2つの提案をさせて頂きました。
www.sow-the-seeds.com


今回は、この2つ目の提案『従来型の手法を取り入れた中規模ユニット』の具体的な運営方法について綴っていきます。

思いつく事を順不同で語っていきますので、ややまとまりのない文章となっていますがどうかお許し下さい。

※今回のブログの内容は、実際に従来型施設、ユニット型施設で働いている人でないと理解できない内容を多く含みます。そのため、それらの施設経験のない方には分かりにくい部分もあるかと思いますが何卒ご了承くだい。

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