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介護の現場から リーダーのためのブログ

【人材育成】WhyとHowを意識しない介護現場は崩壊する

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こんにちはyuです。

今回は人材育成にまつわるお話しを少し。

いきなりですが以下の事例を見て皆さんはどう思われますか? 

  • トイレのドアを開けたまま、女性車椅子利用者のトイレ介助を行い、便座に座った利用者から職員さんが離れて、チラチラ様子を見ながら他の作業を始めた。

  • 尿意はあるが、紙おむつをつけている利用者が「おしっこ出た」と訴えても「時間じゃないから…」と交換してくれない

  • 食事の際、ごはんに薬を混ぜている。

出典:『身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた 介護相談員の活用に関する調査研究事業 報告書』特定非営利活動法人 地域ケア政策ネットワーク 介護相談・地域づくり連絡会平成 29(2017)年 3 月


虐待?不適切なケア?

介護の世界には、明らかに虐待と言われるような内容のこともあれば、虐待ではないけど不適切だよね(虐待の芽・グレーゾーン)と言われるような内容のこともあります。

虐待や不適切ケアが起こる背景は様々ありますが、多くの場合『いきなり起こる』ものではなく、その兆候は『日頃のケアの中から徐々に現れている』ことが殆どです。

こうした事態が悪化しない為に必要な視点として、WhyとHowを意識することが大切ですよ、というお話しを今回はさせて頂きます。

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あなたの施設は大丈夫?介護施設の決算書を見てみよう【貸借対照表を解説する】

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先日、福岡県にある介護施設の経営難がニュースになっていました。

 福岡県行橋市流末(りゅうまつ)の社会福祉法人「友愛会」が運営する特別養護老人ホームなど2施設で、複数の職員退職や、水道代の支払い遅延など運営に行き詰まったことが3日、分かった。市は同日、施設への水道供給を停止。計約30人の入所者の安全を図るため、市内の別の施設に近く移送する異例の対応を取る。法人には年内に、社会福祉法に基づく改善命令を出す方針。

中略

 関係者の話では、法人は、利用者を行橋市居住者に限定したことなどから経営が徐々に悪化。10月には、法人の事実上のオーナーの元行橋市議が急死したことも、運営に影響を与えた。数十人いた介護職員らのうち複数が給料支払いの遅れなどで退職しており、現在、数人の職員で入所者の世話をしているという。

法人は10、11月分の2カ月分の水道代約40万円を延滞。市は11月30日までに支払いがない場合は供給を止めると通告していたが、支払いはなかった。これまでにも長期にわたる延滞があり、市は特別監査を行い、再三、改善勧告を出し、指導していたという。市は入所者の移送と同時に立ち入り調査し、経営状態を詳しく調べる。

出典:2018/12/04付 西日本新聞朝刊

介護施設というと、一般的には「少子高齢社会だし、建てれば儲かる」と思われそうですがそうとも限らず、倒産するケースも普通にあります。

例えば、地域によっては想定していたよりも利用者が少なく(あるいは事業所が乱立していて)利用者が集まらない、職員が集まらないためフル稼働出来ず初期投資を回収できない、介護報酬改定による事業の難しさなど、そこには様々な理由が挙げられます。


介護事業と言えど安泰ではない昨今、事業所の運営状況はそこで働く職員にとっても他人事ではいられません。

いち介護士と言えど、事業所の財政状況をたまには把握してみるのも良いと思います。

今回は、ニュースにもなった社会福祉法人「友愛会」の財務諸表を参照しながら、財務諸表の見方と、その内容を解説していきます。

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スウェーデンの老人ホームとの比較から、日本型ユニットケアの問題点を考える【書籍紹介】

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こんにちはyuです。

少し前のことになりますが、このようなニュースがありました。

埼玉県は3日、特別養護老人ホーム(特養)の整備計画などを検証する県議会の特別委員会で、今後認可する特養について、10床をひとまとまりにして手厚い介護をする「ユニット型」と呼ばれる個室を実質減らす方針を示した。国はユニット型の整備を重視するが、自民党県議団の強い意向で県が方針転換した形だ。
〜中略〜
従来型は入居費用が低く抑えられ、ユニット型よりも従来型を希望する入居希望者が多いとの声が施設にはある。

出典:特養整備、ユニット型減らす方針 埼玉県が方針転換:朝日新聞デジタル(2018年7月4日)

これまで国はユニット型特養の設置を推進してきました。2001年以降、新設される特養はユニット型のみという形だったのですが、ここにきてその方針に陰りが見え始めています。

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出典:「社保審-介護給付費分科会 第143回(H29.7.19) 参考資料2」より


上のニュースでは、利用者にとってユニット型特養は金銭的負担が大きく、従来型特養を希望する人が多いことがその理由としてあげられています。

私はどちらの施設でも働いたことがあるのですが、この利用者負担以外にも様々な理由から今のユニット型特養を続けていくのには無理があると感じています。

今回は、岡田耕一郎・岡田浩子著「スウェーデンの老人ホーム 日本型ユニットケアへの警鐘」を参照し、日本とスウェーデンのユニット型施設の違いを見比べながら、いま日本のユニット型施設が抱えている問題点について考えていきたいと思います。

スウェーデンの老人ホーム―日本型ユニットケアへの警鐘

スウェーデンの老人ホーム―日本型ユニットケアへの警鐘

 

※ユニット型と従来型の違いについては、ある程度基礎知識がある前提でこれからの話を進めさせていただきます、ご了承ください。

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「穏やかな老い・穏やかな死へのサポート」について法令にも明記する事が必要だ【持論】

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久しぶりの更新になります、yuです。

最近はもっぱらTwitterで遊んでました、すみません。

さて、そんなTwitterをしている中で、色々と論争と言いますか、ちょっと話題になった事がありました。

自立支援を積極的にやっている施設の事例なのですが

やってる側は「今までの療養上の世話に終始した介護は古い!あれは介護じゃない」とこき下ろす、逆に介護度の高い利用者を見るような施設の人は「それ軽度のお年寄りだからできる事でしょ、うちらの事こき下ろすのは筋違いじゃないか」と反発する(私は特養勤めなので後者寄り)。

これについては、どちらが正しいとかではなくて、施設形態によって人員配置やできる事も、お年寄りの状態も違いますから、お互いできる努力をやればいいんじゃないか、どちらかをこき下ろす必要ないよね、というのが私の結論なのですが…

この件に限らず、例えばオムツゼロとかもそうなのですが、介護業界には自立支援を理由にこれまでの介護を否定したり、普通に介護している人に劣等感を抱かせるようなことを言ったりして「何か新しい素晴らしいことやってるぜ!これからはこれだ!」というようなムーブメントが時々起こります。

参考過去記事▼

「療養上の世話は古い」とか、「オムツゼロ」とか、あとは私がよく言う「無理やり食事介助」とか…

それぞれ別個のことですが、実はこれらの問題が暴走する要因にはある共通の法則があります。

では詳しく解説していきましょう。

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読書感想【安楽死を遂げるまで】

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こんにちはyuです。

前回に引き続き、こちらの本の紹介です▼

安楽死を遂げるまで

安楽死を遂げるまで

 

著者プロフィール

スペインとフランスを拠点に世界各国で取材するジャーナリスト。海外の事件や社会問題から、政治、経済、スポーツ、医療まで幅広く活動する。6言語を操る。 最新刊に『安楽死を遂げるまで』

引用元:宮下洋一 YoichiMiyashita (@MiyashitaYoichi) | Twitter

 

前回の記事では、こちらの本で紹介されている、世界の安楽死事情について、各国の安楽死法や死にいたるまでの手段の違いなどについて解説しました。

今回は、著者が取材した実際に安楽死を遂げた人々やその家族のインタビューを紹介し、死生観や安楽死の是非などについて、私の所感を交えながら考えていきたいと思います。

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世界の安楽死事情まとめ【書籍紹介】

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少し前のことになりますが、この本を読みました▼

安楽死を遂げるまで

安楽死を遂げるまで

 

 著者プロフィール

スペインとフランスを拠点に世界各国で取材するジャーナリスト。海外の事件や社会問題から、政治、経済、スポーツ、医療まで幅広く活動する。6言語を操る。 最新刊に『安楽死を遂げるまで』

引用元:宮下洋一 YoichiMiyashita (@MiyashitaYoichi) | Twitter

 

 

この本には、実際に安楽死を支援する団体への取材、安楽死現場への立会い、残された家族への取材などを行った様子がかなり生々しく記されています。

涙なしには見れませんでした。

また、「死の現場」という観点だけでなく、安楽死が認められている国々の法的な違いや、死に至るまでの手段の違い、歴史なども分かりやすくまとめており、とても参考になりました。

ずっとこの本の読書感想をブログで書きたいなぁと思っていたのですが、内容が内容だけに身構えてしまって腰が重い…。

今回はその一歩手前として、こちらの本を参考に各国の安楽死事情の違いを備忘録的にまとめておこうと思います。

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介護士一人あたりの年間有給取得日数、0.6日→10日以上を実現するまでのプロセス

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こんにちはyuです。

平成31年度から有給取得の義務化が始まりますね。今まで職員の有給取得状況について意識していなかった・対策をしていなかった会社では、今から準備をしておく必要があります。

平成30年6月29日に労働基準法などの改正案を含む「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が成立したことにより、平成31年4月1日から一定の条件を満たす労働者については、年に5日(以上)の有給休暇を取得させることが義務化される予定になっています。

参考:有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報まで徹底解説 | BizHint(ビズヒント)- 事業の課題にヒントを届けるビジネスメディア


知人の勤めるあの施設なんか、どうするのかすごく心配!

先日ツイッターにて、うちの施設は有給取得率が良いという旨をお伝えしたところ、ありがたいことにリクエストを頂きましたので、今回はそうなるまでの道のりをお伝え出来ればと思います。

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